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税制知っ得

平成29年2月13日

38.企業内共済会の法務と税務

企業内共済会とは

企業内共済会とは、企業に属している役員・使用人を主な構成員として組織され、親睦や福利厚生(法定外福利)に関する事業の推進を目的とした、福利厚生団体のことです。共済会、(職員・従業員)互助会、企業福祉会、共済組合などとも呼ばれています。もともと終身雇用、企業内労働組合、年功序列を特徴とした日本の企業において、企業内共済会は、これまで多くの企業に導入されてきました。

ところで、日本の伝統的企業文化が変化し、また、個人の多様化が進んでくる中で、会社が個人のライフサイクルに対して、関係する度合いも変化してきました。一般社団法人日本経済団体連合会が毎年行っている福利厚生費の最新の調査結果によりますと、法定外福利費全体について2015年度は9年ぶりに増加に転じましたが、総じて抑制傾向にあるようです。

依然として、企業内共済会は、企業と従業員とを結びつける経営資源であることは事実ですが、個々の企業の従業員の趣向のトレンドに応じて、その在り方について見直しをされている企業も見受けられます。

そこで、企業内共済会の法務と税務について、身近な運営方式を中心に、ポイントを整理したいと思います。

企業内共済会の運営方式

共済会の運営方式には、様々なバリエーションがあります。

① 従業員団体方式

会社からの独立性が低い団体で、会社の内部組織として扱い、団体の収支を会社の収支に取り込む。

② 人格のない社団方式

社団や財団としての登記はないが、会社からの独立性が高い団体で、会社から独立した団体として扱い、その団体自体が独立の事業主体として、収支を計算する。

③ その他

労働組合方式(労使共同拠出でありながら、形式的には労働組合法に基づく労働組合によって運営され、非組合員も加入している共済会。)、財団・社団方式、株式会社方式など。

 

身近な企業内共済会の方式選択・運営と整理上の注意

少し古いデータになりますが、㈱産労総合研究所、(社)企業福祉・共済総合研究所が平成14年に実施したアンケート調査によれば、人格のない社団方式が56.6%で大半を占め、ついで、従業員団体方式が34.2%、労働組合方式が2.6%となっています。

そこで、最も身近な運用方式である従業員団体方式(以下、「組合方式」といいます。)と人格のない社団方式(以下、「社団方式」といいます。)との企業内共済会の選択・運営と整理上の注意についてお話ししたいと思います。

 

(1) 方式選択と運営

多くの場合、会社が企業内共済会に対して、補助金を交付しています。会社から助成を受ける企業内共済会に対して、会社との関係で団体としてどの程独立させるかが、ポイントになります。

つまり、法人登記していない、いわゆる任意団体をして、法人と同じように、一つの独立した存在として扱うか否かの問題です。

団体としての独立性を付与すれば、人格のない社団等 となり、その団体自身が法人税の課税対象になります(法人税法3条)。もっとも、法人税法の定める収益事業を開始した時から法人税が課せられることになります(法人税法7、13条、)。この場合、所得がない事業年度でも、地方税である法人住民税均等割が課されることになります(地方税法294条8項)。ですから、完結した会計帳簿を持たなければなりません。

これに対して、独立性を付与しなければ、その団体は、民法上の組合(民法667条)となり、その団体自身は法人税の課税対象にはなりません。企業内共済会は、単なる当事者の組合による取引(契約)関係にとどまります。ここでいう当事者とは、会社とその従業員のことをいいます。この場合、本来は、この団体の事業年度ごとの損益分配の割合に従い、会社と従業員に対して、損益が分配され、それぞれが、他の所得と合わせて、法人税又は所得税の申告義務を負うことになります(所得税基本通達36・37共-20、法人税基本通達14-1-1~2)、もっとも、会社が、企業内共済会に対して、従業員の会費よりも多くの補助金(「相当の金額」)を出している一定の場合には、事業に係る収益、費用について全額を会社のそれとし、従業員への課税については不問にしています(法人税法基本通達14-1-14,15、所得税法基本通達2-8、2-9)。ですから、帳簿も簡易なもので足ります。

会社の規模が相当大きく、また、収益事業を始め、多様な福利厚生事業を行い、会社の役職とは独立して役員が選出され、会社の施設とは別の独立した施設で業務を行うような場合には、独立した団体性が認められるので、社団方式で運用すべきでしょう。他方、基礎収入の過半を会社に依存し、役員が会社の役職に対応していること、独立した施設・設備を持たず、会社の職員が経理を兼務しているような場合は、独立した団体性が低いので、組合方式で運用すべきでしょう。

組合方式と社団方式の採用については、必ずしも、団体の属性から演繹的に一方の方式しかとれないというものではなく、他方で、団体の属性とは独立してどちらの方式を選ぶことができるということでもなく、団体と組合の境目にあるような場合、運用の仕方で方式を選択できるということになろうかと思います。

 

(2) 整理方法

仮に、従業員共済会が、必ずしも従業員の趣向を反映しなくなったとして整理するとして、いかなる点に注意すべきでしょうか。

この点については、上で選択した運営方法の巻き戻しと考えればわかりやすいかと思います。

まず、いずれの方法をとったにしても、解散の決議が必要になります。解散とは、法人その他の団体が、その目的である本来の活動をやめ、財産関係の整理をし、清算をする状態に入ることをいい、解散決議するだけでは、終わりません。

組合の場合、引き続きなすべき清算手続において、清算人を選任し、清算人は、①現務の結了、②債権の取立て及び債務の弁済、③残余財産の引渡し、並びに、④これらに関して必要な職務を行うことになります(民法688条)。平たく言えば、まず第三者に対する債務の存否を確認し、弁済し、その後で残余財産があるときに従業員と会社に返済すべきとするものです。

この際、最大の関心事は、残余財産の分配になりますが、定款に残余財産の分配方法が規定されていないときは、強行規定に反しない範囲で、分配方法を定めることになります。この際、必ずしも共有持分が明らかでない場合どのような基準によるか、退社した社員をも対象とするか、従業員から異議を述べられないよう、合理的な基準にする必要があります。

また、税務上は、運用中と同様に、損益分配の割合に従い、損益を計上し、会社と従業員のそれぞれが、法人税または所得税の確定申告を行うことになると思われます(法人税法基本通達14-1-1~1の2、12、所得税法基本通達36・37共-12)。

社団方式の場合は、権利能力なき社団については法律に規定はありません。そこで、権利能力なき社団の法的性質に遡って考えれば、総有関係であるから、各構成員は持分権をもたず、分割の請求もできないことになります。したがって、予め残余財産の分配について、定款の定めがない限り、分配の決議により初めて具体的な分配請求権が発生することになります。この場合、民法の原則である信義則に反しない限りで、合理的準により分配することになろうかと思います。なお、最も類似する団体である一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の規定(239条1項)では、定款または清算法人の社員総会で決めることになっています。

また、税務上は、会社が分配を受ける分は、配当になりません(法人税法24条)ので、全額益金算入になり、個人が分配を受ける分は、一時所得となります(所得税法基本通達34-1)。

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