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あなたの財産承継に関する悩みに答えます

令和元年9月6日

2.障害者の次男の生活保障

私には、妻と長男、次男がいますが、長男は重度の知的障害者で、1人で生活できません。私は不動産(土地)を所有しており、大手メーカーの工場用地に貸しているので、月100万円の賃料収入があります。

私が死んだ後、妻に土地を管理してもらい、賃料で妻と長男の生活を確保してあげたいと思っています。また、妻の死後は不動産の賃料で長男が施設に入所して生活していけるようにしたいと思っています。

次男は、4年制大学を出て、東京で結婚して一部上場企業に勤めています。次男は一人で十分生きていけますし、私たち夫婦とはそりが合わないこともあり、特に財産を残してやるつもりはありません。

私の希望を叶えるためにはどうすればよいでしょうか。

このまま成行きに任せれば…

① 次男に財産を残さないという希望は叶えられない可能性があります。

② 長男が生活していけるようにしたいという希望も叶えられない可能性があります。

あなたが亡くなった場合も、奥さんが亡くなった場合も、次男は相続分を有するので、次男が同意しない限り、次男に財産を残さないという希望は叶えられません。

また、長男は重度の知的障害者であるとのことなので、仮に、 長男に財産(土地)を残すことができても、 長男自身にはその管理ができません。ご夫妻の死亡後のことにつき、長男が生活していけるか否かも、結局次男の意思にかかることになります。

 

解決策

① 遺言の活用

② 妻を受託者、次男を第二次受益者として民事信託契約を締結し、財産の管理を委託する方法

③ 成年後見制度を利用し、次男の身上監護を行う方法、等

が考えられます。

 

遺言の活用とその限界

あなたの死後、当面土地を奥さんに管理してもらうだけであれば、土地を奥さんに相続させるという遺言を作成すれば、その目的を達成することができます。あなたの死後は、奥さんが長男の面倒を見てくれるでしょう。

しかし、次男は遺留分を有するので、 次男にも、遺留分割合に相当する、あなたの遺産の8分の1相当額を、何らかの形で確保しておく必要があります。

同じ事態は、あなたに次いで、将来奥さんが死亡した場合にも生じます。奥さんも遺言書を作成することになりますが、すべての遺産を長男に相続させる遺言をした場合、やはり次男には遺留分の問題が生じます。

また、 長男は重度の知的障害者ですから、奥さん死亡後は、 長男が土地を相続しても、管理することができないという問題が顕在化します。このように、遺言のみで処理することには限界があります。

 

民事信託制度の活用

このように、遺言だけでは、長男のために、あなたや奥さん死亡後の財産管理を誰がしてくれるのか、といった問題が残ってしまいます。

そこで、民事信託制度の利用が考えられます。例えば、奥さんが受託者としてあなたの財産を管理し、あなたが存命中は、あなた自身が受益者となって、長男の生活費や介護サービスに必要な費用等、知的障害を有する長男の生活を見るために必要な分の支出を受け、あなた死亡後は、長男を受益者として、同じく長男の生活資金を長期的かつ安定的に給付する方法が考えられます。

この場合、受託者である奥さんが亡くなる場合に備えて、信託設定時にあらかじめ、後継の受託者を決めておいた方が良いでしょう(勿論、最初から、奥さんではなく、若く信頼できる人を受託者としても良いでしょう。)。ただ、後継の受託者として適任者がいない場合や、後継の受託者が奥さんより先に死亡するリスクもあります。長男の一生涯の生活を長期間、継続的に安定させるためには、受託者を親族等の個人にするのではなく、信託会社や信託銀行にする方法が確実です。信託会社や信託銀行は信託業法等の法令や監督官庁の厳しい規制の中で業務を行うので、一定の信頼感があります。ただし、信託会社等は、業として信託事務を行うのであるから、一定の費用がかかります。

あなたが受益者になった場合は、結局自分のものから利益を受けているので、特段の税金はかかりません。しかし、あなたの次に、長男が受益者になったときには、当該信託に関する権利を委託者あるいはあなたから遺贈により取得したものとみなされます。この場合、受益権の評価がいくらとして評価されるかですが、一般にその受益を生み出す土地の評価額よりは低額になりますが、毎年どれだけの経済的利益をどれだけの期間にわたり受けるか、および、そのときの現在価値に引き直す際の係数(福利年金現価率(国税庁が市中の金利を参考に定めます。基準となる利率が大きいほど現在価値は小さくなります。)。いずれにしても、相続税がかかるということです。但し、長男の障害の程度により、10万円(一般障害者の場合)又は20万円(特別障害者の場合)に、85歳に達するまでの年数を乗じて算出した金額が控除されます。

また、仮に、あなたが、生前に、長男を受益者として信託を設定した場合、みなし贈与に該当するものの、長男の精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあれば、3, 000万円(一般障害者の場合)又は6,000万円(特別障害者の場合)まで非課税となります(特定障害者に対する贈与税の非課税)。なお、受益者が非課税の便益を受けるためには、信託の際に、信託会社の営業所等を経由して、「障害者非課税信託申告書」を所轄の税務署長に提出する必要があります。

しかし、遺留分減殺請求は信託の場合も同様に問題となります。信託と遺留分減殺請求の可能性があります。

そこで、遺留分減殺請求権を事前に放棄するように次男に話をしておくことがベストです。相続開始後はもちろん、相続の開始前であっても家庭裁判所の許可を受ければ、遺留分減殺請求権を放棄することはできます。

 

成年後見制度の活用

ただ、民事信託制度は財産についての管理処分行為を受託者に任せるものであり、基本的に身上監護は想定されていません。

そこで、奥さんが元気なうちは、奥さんに長男の身上監護を託せるとしても、奥さんが長男の身上監護を行えなくなる場合に備えて、長男のために成年後見人あるいは保佐人の選任を家庭裁判所に申立てるという方法も検討された方が良いでしょう。

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