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登記問題あれこれ

令和元年11月6日

8.会社をつくる(設立登記5)

今回は会社の資本金についてみていこうと思います。

  

会社の設立に際して、資本に関して決めなければならないことが3つあります。

まずは、設立する会社の資本金の額をいくらにするか

次に、1株の金額をいくらにするか

そして、発行可能株式数をいくらにするか

これらのことを決めないと会社をつくることはできません。

 

資本金の額はいくらにすればいいのでしょうか。現在は以前とは違って株式会社を設立するために最低1,000万円の資本金が必要という最低資本金制度は廃止されていますので、資本金の額はいくらでもよいことになっています。しかし、いくらでもよいといっても1円とかあまりにも低い金額にするのは業種にもよりますが、やめておいた方がよいでしょう。資本金の額は登記事項なので、公開されています。新規に取引をするときには取引相手となる会社のことは調べます。その最初が取引相手となる会社の登記事項証明書を取り寄せ、相手の会社がどれくらいの規模でどのくらい続いている会社かということを見ますが、その際資本金の額は最初に見るところではないでしょうか。その時に相手の会社の資本金が1円となっていたら、その会社を信用して取引しようと思う人は少ないように思います。また、銀行口座の開設なども資本金があまりにも低いと断られる場合がありますし、いざ融資を受けようとなった場合にも足枷となります。その時に増資をして資本金の額を増やすことはできますが、余計な手間と費用がかかります。

では、いくらくらいがよいかですが、そもそも設立時の資本金はこれから会社を起業し経営していくために用意する元手ですから、実際に用意できる金額を上限として考えていくことになります。元手として用意した金額の全てを資本金としてもいいですし、その内の一部を資本金として定めることもできます。

消費税法では、資本金の額が1,000万円未満の場合創業後2年(2期)は消費税を免除するという規定があります。(売上によってはかかる場合もあります。)

また、いわゆる法人住民税の「均等割」についても1,000万円以下なら低い税額で済みます

あるいは1億円以下か超えるかどうかで「中小企業」か「大企業」かが分かれて税率なども違ってきます

上記のことなどから取引相手にも信用されて、融資も受けやすく、消費税の免除も受けてと考えると、業種にもよりますが、300万円から800万円くらいの金額を設立時の資本金の額として多くの会社が設定しているようです。  

次に、1株の金額についてです。

1株の金額についても特に規定はないのでいくらでもいいのですが、当然資本金の額を割りきれる金額でなければなりません。普通は、以前の商法の規定にあった1株の金額である5万円または、わかりやすく1万円としている会社が多いです

話は少し逸れますが、融資と出資について少し考えてみたいと思います。先程資本金を決める際、自分で用意できる金額を上限としてとしましたが、自分で用意できるお金には2種類あります。

1つ目は、自己資金つまり自分で貯めたお金。完全に自分の物で自分が好きに使えるお金のことです。2つ目は融資、つまり借金して用意したお金。銀行や公的機関から借り入れたお金。一般に創業時には会社の実績がないため銀行からは他に信用がなければ借入は難しいですが、政策金融公庫などの公的機関からは逆に創業時を対象とした融資制度があるため創業時の方が借りやすいことがあります。とはいえ借金なので利息を付けて返済しないといけません。大体の場合代表者の個人保証が求められるので、会社がつぶれても代表者に借金が残ってしまいます。しかし、次に説明する出資と違い株式を発行しないので、基本的には経営に口を出されることはありません。そして、出資の場合は融資と違い、会社が倒産しても出資者に出資金を返済する必要はありません。

しかし、出資の場合は出資金の払い込みと引換に自社の株をその出資者に発行し、株主となります。利益が出ている際には株主に対して金銭を配当します。順調に配当されている場合は問題ありませんが、配当が滞り出すと、経営に口を出してくるかも知れません。株主訴訟などの権利が株主にはありますし、株主総会にも参加してもらわないとなりません。またある一定以上の株式をもたれた場合には、役員の解任などもできるようになります。お金を集めて会社を大きくしたのはいいですが、自分が経営陣から外されるなんてことが起こり得ますので注意が必要です。

 

会社の発行可能株式数

会社の発行可能株式数というのは、会社が発行することができる株式の総数のことであり、例えば、現在は100株発行しているが将来的には1,000株まで増やしたいとして定めておく株式数のことで、定款の絶対的記載事項であり登記事項です。

これも以前は、発行済み株式数の4倍までという規定があったのですが、現在は株式に譲渡制限を定めていない会社(公開会社)の場合のみこの4倍までという制限があり、譲渡制限を定めている会社(非公開会社)にはこの制限がありません。

なぜこの発行可能株式数を定款に定めておいて登記しなければならないかといいますと、株式の発行は、取締役会を設置している会社であれば、取締役会の決議で新たに株式を発行することができるからです。株式を新たに発行することによって既存の株主の会社に対する権限が薄くなるからです。例えば100株発行している会社で80株持っている株主がいる場合、この株主は会社の株の内5分の4を所持しているので、役員を解任することも選任することも可能です。しかし、株式を900株新たに発行し、第三者が取得すればこの株主の権限は1,000分の80つまり50分の1となり単独で役員を改選することもできなくなり、会社に対する影響がかなり少なくなりまし、配当に関しても不利益を受ける可能性があります。

資金調達の面からいえば、いちいち株主総会を開くことなしに取締役会が新株を発行できることは迅速に資金を集められるのでよいのですが、無制限に取締役会だけで新株を発行できるとすると、既存の株主は不測の不利益を受ける可能性があります。

そこで会社の発行可能株式数を定款記載事項とし、変更する場合には株主総会の特別決議を要するよう規定されています。株主総会で特別決議を要する事項については、事前に株主の招集通知に記載する必要があり、株主が事前に知ることができるようにしたものです。

実際にどれくらいの株式数が定められているかについては、制限のない会社についても、以前に制限にあった4倍で決めている会社が多いようです

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