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登記問題あれこれ

平成27年8月1日

1.「退職金の現物給付」の登記原因について

もう5,6年前のことになりますが、取引先の不動産会社の社長から、前の社長の退職慰労金を不動産で現物給付したいという依頼がありました。実際には会社名義の不動産を相続人である今の社長とその兄弟に名義を変更したいということでした。退職金は、必ずしも金銭で支払われなければならないということもなく、不動産で直接相続人あてに支払われることには問題はないのですが、問題は、それを登記する場合にどのような原因で登記するかということでした。

 

「現物給付」などという登記原因はありませんし、対価を伴っていないから「贈与」か、いや、それもやはりおかしいでしょうし、「現物出資」だと現物のところが合っているだけで内容は全然逆で違いますし、退職金代わりに不動産を給付するということで「代物弁済」になるのでしょうか?しかし、「代物弁済」は、出来れば避けたい原因です。実際には退職金代わりに不動産を給付する場合は「代物弁済」でしょうが、この場合、退職金として不動産を給付するものですから「代物弁済」はおかしい。しかし、適当な原因がありませんし、「代物弁済」でいくしかないのか、でも「代物弁済」はやはりイメージが悪い。なにか借金のカタに不動産を取り上げられるというイメージですし、「代物弁済」などという原因で所有権が移転している物件だと、売却する際にも銀行などが融資をいやがるケースもあります。出来れば避けたい。

 

それで何度か法務局に足を運んで相談し、この原因でどうですかと持っていったのが、最終手段というか、条文に「による給付」や「による移転」の原因でした。実際に持っていったのが「年月日会社法第361条による給付」というもので、それで調べて頂いたところ、その登記原因で受け付けられたものがあるということで、その原因で無事登記することが出来ました。

 

その後、他の方のホームページなどを閲覧すると、「年月日会社法第361条1項3号による移転」という登記原因が示されており、また、登記研究の質疑応答において「年月日退職慰労金の給付」という原因が示されました。

 

他の司法書士さんがホームページで触れていたり、登記研究に取り上げられたりと、この退職慰労金の現物給付は、ニーズが増えているように思います。

 

税金や、融資の関係で、自宅不動産や子供の家を会社名義にしていたり、そのほか不動産を会社名義で所有していることも多々あると思われますので、その不動産を個人名義にかえたい、もしくは税金の関係や会社の資産額の関係で会社の財産からはずしたい。というときに、「売買」で移転するには対価が必要になりますし、「贈与」にすれば多額の贈与税がかかります。ところが、この「退職慰労金の給付」の場合には退職金として受け取るものですから、退職金に対する相続税の非課税限度額の適用を受けることが出来ますし、また、会社の株式の相続に対して、会社の主要な資産であり、時価計算される不動産を処分できるので、株価に対する対策にもなるように思われます。特別損失で計上することも、出来る場合もあり、なにより手元に退職金として支払う現金が残ります。勿論デメリットなども考えられるので会社の内容や状況によって一概に言えるわけではありませんが、使える場面も結構ありそうな登記原因だと思います。

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