トップページ  >  連載  >  渉外関係13

渉外関係 シリーズ連載

12.渉外関係エトセトラ JV(合弁)契約

前回までは、売買契約に始まりライセンス契約まで、つまり取引当事者間の継続的契約について、見てきました。他にも、基本的業務に関連するものだけでフランチャイズ契約、製造委託(OEM)契約、コンサルティング契約…とあり、これに付随する契約を挙げれば、融資契約、担保権設定契約、保証契約、倉庫契約、運送契約、為替契約、それに組織の内部の契約として雇用契約、各種外部委託契約…と、意識して見れば、企業の活動は本当に契約でがんじがらめであることが分かります。

しかし、あまり普遍性のない契約類型あるいは運送取引委など約款などにより定型化しており事実上契約内容について交渉できないような契約について、云々することは、今回の連載の目的とはしておりませんので、割愛します。

最後に、独立当事者間の契約を超えて、さらに当事者の関係が進展したジョイントベンチャー(JV)契約についてお話し、契約の作成に関するシリーズを終えたいと思います。

JV契約とは、出資者が、相互の合意に基づき、新たに組織を設立・運営し、利益を分配することを約する契約です。すなわち、出資者間の憲法と言うべきものです。

JV契約も、国際契約の一としてよくありますが、継続的売買契約、一手販売契約、総代理店契約、ライセンス契約などほど定型化していません。それぞれのJV契約ごとに個性があり、カスタムメイドをすべき点が多いのが特徴です。

当事者間には、すでに継続的契約関係があるとして、契約更新に際し、単に独立の立場で取引を続けるのではなく、さらに事業を発展させるため、共同で会社を設立する(この会社を合弁会社といいます。)という合意に至ることがあるかと思います。そのような合意に至るや否や、後日の遺憾を避けるため、色々と取り決めなければなりません。特に、異なる言語、法的制度、商慣行の異なる国々に属する出資者によって一つの共同体が形成されるの訳ですから、日本人の仲好同士で、相手方は口に出さねども事実関係についてこのように認識し、あのようにしたいと思っているだろうという、阿吽の呼吸では、将来の経営は全くおぼつきません。まさに婚約当事者のように、将来のバラ色のビジネスプランを思い描く段階では、ネガティヴなことは言い出しにくいかとも思います。実は、JV契約の交渉の中身は、これから共同生活に入ろうとしているにもかかわらず、もう共同生活の解消の条件を先取りしてしまうものです。ですから、争いを嫌うという日本人の本性的には、回避しがちな事項もいくつかあります。しかし、このような問題の事前の検討を避けたばかりに、JVからの撤退に苦労をされたという話もあります。日本人同士の間でも、経験的に分かっていることと思います。これから当事者間にギブアンドテークの関係があるうちは、今回譲っても別の局面で利益を得るという潜在性を期待して、我慢もできます。

しかし、もう相手方と取引を継続しないとなったなら、撤退する側は、できるだけ高い値で株式(持ち分)を買い取って欲しいと思うでしょう。特に、それまで親会社として多くの出捐をなした場合は尚更でしょう。一方が主張すれば反対に他方は、態度を硬化させるかもしれません。その時に不利になるのは、アウエに投資したグループです。株式の評価を巡って紛争になれば、その紛争解決過程自体により、出資者の人員、時間、コスト、さらに、弁護士費用などの紛争解決費用が累積的に嵩んできます。撤退当事者としては、紛争解決にそれほどコストがかかるなら、その分だけ株式評価額を譲り、さっさと撤退しようということになりかねません。投資に際しては、せめてこの辺りまでは考慮すべきです。いつも申し上げていることですが、良好なうちに、最悪のシナリオの打開策を決めておくことなのです。

合弁に関して、混同しやすい契約があります。株主(出資者)間合意という契約もあります。株主(出資者)間合意とは、新設会社の株主(出資者)が事業方針についの合意であり、株主(出資者)が、相互に株主総会またはこれに準ずる機関において、約束に従って、行動することを約束するものです。定款は、会社が行える取引の範囲を画する事業目的、組織及び意思決定方法などについて規定した会社の基本法です。これらとは混同しないようにしてください。規定の内容が同じように見えても、約束の名宛人、つまり、拘束される人(法人)が異なります。したがって、強制方法も異なるのです。

JV契約は新しい事業組織ができる前に、成立します。JV契約は、会社設立後の会社の株主(出資者)間合意の内容を先取りしています。株主間合意は別途締結しない場合もあります。これに対し、定款は、一般に不可欠です。日本の場合、定款の認証を経、設立登記を経なければ、会社を設立することはできません。

しばしば、JV契約の内容が定款の規定に優先するというような規定があります。しかし、この規定の実際上の効力については、注意が必要です。定款は、設立された会社そのものに対し、その行動を直接コントロールするのに対し、JV契約は、その契約の当事者である出資者を直接コントロールするものではりますが、会社の行動を直接コントロールするものではないのです。ですから、JV契約の中に規定されている事項が具体的に定款の中に規定されていない限り、合弁会社の中での意思決定手続は、JV契約事項の趣旨を実現するため、なす債務(作為義務)またはなさない債務(不作為義務)に拘束された出資者の行為の束によってのみ実現されるということです。この点、アメリカの裁判例には、JV契約の内容が合弁会社の法律関係に直接適用されるとしたものがあるようです。しかし、このような扱いが日本でされるかは不明です。ですから、重要な事項は直接かつ明確に定款の中でも規定するということです。もちろん、JV契約の中でもです。

今回は、JV契約締結の際に、検討すべき条項の仔細を挙げることはしませんが、一般的に見て、最低限規定すべき事項は以下の通りです。

(1) JVの事業目的及び資本(金)

(2) 会社の意思決定方法及び役員構成

(4) JVに対する融資

(5) 意思決定上のデッドロックを防ぐための方法

(6) 株式(持ち分)を譲渡する方法

(7) JV関係が解消した後の出資者間の義務

以上、渉外関係についての各種契約を締結する上での入門的なお話は今回をもってとりあえず終了したいと思います。ご一読いただきありがとうございました。

top