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渉外関係 連載

11.渉外関係エトセトラ ライセンス契約

前回までは、売買契約に引き続き代理店契約について、見て来ました。今回は、ライセンス契約について、固有の論点について見ていきたいと思います。

売買契約の客体は、一般に形ある物(有体物)であり、直感的に取引内容が分かるのに対し、ライセンス契約の客体は、一般に形なき物(無体財産権)であり、目的物がないため、何を約束したらいいのかイメージしにくいものです。

一口にライセンス契約といっても、実は様々なパターンがあります。ライセンスの客体により区別すれば、発明の利用を内容とする特許権もしくは実用新案権のライセンス契約、デザインの利用を内容とする意匠権のライセンス契約、商品またはサービスを示すために用いられるマークの利用を内容とする商標権のライセンス契約、芸術的な創作を利用するために用いられる著作権のライセンス契約、特許権のように公表・登録されていないノウハウを利用するために用いられるトレードシークレット(営業秘密)ライセンス契約などです。このようなライセンス契約の客体になり得るものを定義すれば、「人間の知的活動により生み出された無形の財産的価値に係る権利」(知的財産権)であり、広範にわたります。

これらの知的財産権の例からわかるように、特許権など技術を内容とするグループ(①)と商標権など表示を内容とするグループ(②)に大きく分かれます。

それぞれの性質から固有の論点が派生してきます。①の典型は、ライセンサーからライセンシーに対する技術(秘密情報を含む。)の開示を前提に、その技術を使用して、製品を生産するということになりますので、生産過程以降にかかわります。他方、②の典型は、ライセンサーからライセンシーに対する一般に既に世間に知られている表示の使用許可による商品の販売販売ということになりますので、販売後流通全般にかかわります。以下、①のカテゴリーのライセンス契約を技術型、②のカテゴリーのライセンス契約を表示型と言います。

ここで、一般的に契約に共通の要素を除いて、技術型、表示型のライセンス契約それぞれに、固有の契約要素について、比較対照したいと思います。下記の表をご覧になればわかるように、両者に共通の問題として、一定の地域に独占権を付与するか、これに伴いライセンス料をどのように設定するか、さらにライセンス料算定のパラメーターについて、その真正さをどう確保するかが重要な事項になります。

他方、個別の問題としては、技術型の場合、技術情報が命です。技術に関する情報は、一旦第三者に漏れたら元に戻りません。最も重要な技術情報についてはブラックボックスにすることでファイアーウォールを確保できるでしょうが、いずれにしても情報の開示の範囲及び管理について細心の注意を払う必要があります。提供する技術情報がノウハウの場合は、特にそうです。ライセンシーによる改良技術について、ライセンサーに当然に権利を移転させるグラントバックが規定されることもありますが、独占禁止法によりその効力が否定されることがあります(知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針参照)ので注意が必要です。なお、他にもライセンス契約に付随する条項の独禁法から見た適法性も同指針に記載してありますので、注意してください。

表示型の場合、マークに対する信用が命です。一旦失われた信用は容易には回復しません。ですから、どのような製品を表示するためにマークの使用を許すか、その後も継続的に適切な表示方法が確保されているか、使用対象も許諾の範囲内にあるかなど、継続的な管理・監査が不可欠です。実際、輸入総代理店契約の一環として、ブランド名のライセンス契約がなされるケースがよく見られます。

性質による違い 契約の客体 技術型契約 表示型契約
特許権、実用新案権 ノウハウ(トレードシークレット) 商標権 著作権、意匠権
共通 ライセンス料 初期料金/固定金額/比例金額(売上、製造量)/右組合せ
共通 ライセンス料確保の担保 ライセンス料に連動する売上、製造量の監査
共通 使用の態様 排他的使用か併存的使用か、製造または販売の地域、期間、サブライセンスの可否
共通 ライセンスの客体の瑕疵

権利者が別にいることが判明した場合または第三者が自己の権利と主張してきた場合どうするか

ライセンシーはライセンスの客体の財産的価値(知的財産性)を否定できるか
相違 製造物責任 製造方法による製品の欠陥の場合のライセンシーに対する補償
相違 ライセンシーによる改良技術

どちらに帰属するか

相違 技術援助 技術供与の方法、費用
相違 秘密保持 契約期間中、終了後の秘密の保持 契約期間中、終了後の秘密の保持、最も重要
相違 表示対象 -(但し、製品についてライセンサーの商標使用時) ブランドイメージの保持をどうするか、表示対象となる製品の種類・範囲、品質管理も重要 キャラクターのイメージの保持をどうするか、製品の種類・範囲、品質管理も重要

以上、重要な問題点の指摘にとどまりましたが、特に、国際契約の場合、一旦紛争が起こった場合、法律、商慣習、文化が異なる故、弁護士に対する相談でさえ容易ではありません。紛争の予防の第一歩は、契約に至る前に、しっかり問題点を把握し、遠慮せず、しっかり主張すべきことは主張することだと思います。

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