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渉外関係 シリーズ連載

10.渉外関係エトセトラ 代理店契約

前回までは、最も多い商取引の形態である売買契約の場合について、契約の基本的な条項について、見て来ました。今回からは、売買契約ほどではありませんが、これに準じてよく見られる商取引の形態である代理店契約について、固有の論点について見ていきたいと思います。

売買契約と代理店契約の違い

商品を販売する場合、大きく分けて販売店(または直接最終消費者)に対する販売(売買契約)と、代理店を介するもの(代理店契約)とがあります。これらの概念は法律的には異なるのですが、実務者の間では区別を意識せず混同して用いられていることも多いので注意が必要です。代理店契約では、代理店がユーザーに対して委託者のためであることを示して商品を売り込みます。売買契約は委託者とユーザーとの間に成立します。売買契約では、販売店が海外企業の商品を購入し、販売店が自己の計算でユーザーに売却します。このような法律上の効果の違いから、売り手(委託者)は、誰の信用を調査すべきか、在庫管理費用は誰が負担するか、ユーザーに対し誰が品質保証を負うか、等の点で異なってきます。

主な違いを表にまとめれば、典型的には、以下のようになります

事項 売買契約 代理店契約
売り手(委託者)が調査すべき信用 販売店 買い手(卸売業者、最終消費者…)
在庫管理費用の負担者 販売店 委託者
品質保証者 販売店 委託者
危険負担(双方の責任なく目的物が滅失したときの損失の負担者)(注) 販売店 買い手(卸売業者、最終消費者…)
売り手(委託者)が買い手(代理店)の販売価格を拘束できるか 当該商品が一定の市場占有率を有する場合など再販価格の維持として競争法などにより禁止される場合あり 拘束できる

(注)日本民法では、買い主が受け取りに来る約束で、売り主が、目的物を特定し、他の同種のものから分離して、買い主に通知した場合には、その損失の負担が買い主に移ります。

売買契約と代理店契約の共通点

実は、これまでの説明では、売買契約のうち、単発の売買契約を前提にその規定の内容及び仕方を見て来ました。

これに対し、代理店契約は、一般に同種の製品の売買を第三者を介して行うということの性質上、継続的な契約関係であることが前提になります。

(1)で述べました通り、両タームが、しばしば混同して用いられることにもあるように、売買契約が継続的なものである場合、代理店契約と規定事項(内容)は、ほぼ等しくなります。

具体的には、これまで述べてきたシリーズ売買契約(2)~(6)の中で説明してきました事項は当然のこととして、それ以外に、契約期間、契約終了条件(場合によっては売り手の販売店または代理店に対する補償も含む。)、販売(代理)するテリトリー、特に、独占権(一手で販売または販売代理する場合)を付与する場合に組み合わされる条件としての最低販売(代理)義務、製品に関する情報提供・宣伝義務、契約期間中・終了後の競業避止義務、商標権・特許権など売り手(委託者)の権利侵害時の販売店(代理店)の義務、契約期間中に知り得た営業上の秘密の保持義務、売り手(委託者)と販売店(代理店)が一つの事業者でないことの確認など、多くの事項が挙げられます。

どのような取引になじむか

商品が個性的な場合、依頼者毎にカスタマイズされる必要のある場合、複合的か・高価であるか・高度のメンテナンスが必要とされるような機械装置などの場合は、製造元などが、直接顧客に対し、関係を形成することが望ましいので、代理店契約がお勧めです。

これに対し、多くの買い手向けの販売のために多くの製品の在庫を置いておかなければならない場合は、直接の売り手が自由に商品を管理できることが望ましいので、売買(販売店)契約がお勧めです。

その他

委託者と代理店との関係を律する法律は、国により異なりますから、後日の紛争を回避するために、契約内容を明示しておく必要があるのは勿論です。しかも、売買契約以上に、規制がなされることも多いようです。どちらかというと立場の弱い代理店の保護のため、代理店のある国の法律によっては、雇用契約と見なしたり、あるいは、契約文言を排除して、代理店に有利な条件(例えば、契約解除の際の補償など)が適用されるなど、当事者自治が当てはまらないこともあります。ですから、代理店のある国の関連法令を調査したうえで、権利義務内容を規定することをお勧めします。

また、課税上、代理店をもって恒久的施設(permanent establishment)として扱われ、委託者が代理店のある国から課税されることもありますので、予めの調査も望まれます。

最後に、いずれの販売形態をとるにつけ、現地で販売に関わる人は売り手(委託者)の大使の役目を果たす人です。失敗すれば長い間悪影響が残りかねないので、そのパートナーの選択には細心の注意をもって行うことになります。

では、次回は、同じように、ライセンス契約について、見て行きたいと思います。

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