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渉外関係 連載

4.渉外関係エトセトラ 売買契約(1)「基本的要素について」

前回は、論点漏れを防ぐための作業手順をご紹介しました。

ついで、どのような契約類型を原型にするかの段階です。まず、売買契約(必ずしも一回限りのものではなく、継続的な関係を前提にする条項もあります)について、見ていきたいと思います。

売買契約は、当事者の一方がある財産権(具体的な有体物だけでなく、例えば売主の第三者に対する売掛金債権など無体物も含む広い概念です。)を相手方に移転することを約束し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約束することで成立する契約です。人類が貨幣を発明して以降の最も基本的な人の経済活動を支える仕組みです。

本契約の基本的義務といえば、売主が、契約の本旨に従った財産権を相手方に移転すること、買主が、代金を支払うことです。もし、すべての取引が、口頭の合意、即、COD(Cash on Delivery、現金引替方式)で行われるなら、それで双方の義務の履行は終わったことになります。特に、Buyer beware(売主が故意に瑕疵を隠さなかった以上、そのリスクは買主が負うべきだというコモンローのドクトリン。)が適用される場合、文字通り、そこで契約関係は終了することになります。

しかし、皆様がご経験されている通り、現実の取引はそう単純ではありません。

(1)
売買代金、運搬費用、保険はどうするか。
(2)
契約成立時期と比べて、代金支払時期、目的物引渡がどれくらい後か。
(3)
目的物引渡時期と比べて、代金支払時期が前か、後か。
(4)
所有権(物に対する排他的支配権)は、いつの段階で売主から買主に移転するか。
(5)
契約後代金受領までに目的物が何らかの理由で滅失した場合、あるいは運送途中で滅した場合、代金債権は存続するのか。
(6)
目的物の引渡後、隠れた瑕疵が発見された場合、代替品、代金減額を請求できるか。

これらの現象は、一方が義務を履行後もなお、他方に履行すべき義務が残っていることにあります。そこに、当事者の解釈が介在し、話し合いでまとまらない限り、厄介なことに、まだ義務の履行を得ていない側が、第三者に紛争解決を委ねなければなりません。履行されてない側は、すでに損失を被っているのですが、さらに紛争解決のために費用を捻出しなければなりません。

取引相手方が国内であり、資産状況が十分把握されているなら、紛争解決費用の出費もすべきでしょう。しかし、取引相手が海外である場合、紛争解決費用が膨大になり、かつ、その効果の判定も容易ではありません。

ポイントは、売主側買主側のいずれの立場からも、相手に履行の問題を残す、言い換えれば必要以上に信用を供与しないことに尽きるのです。しかし、相手方とのBargaining powerの違いがあります。何を譲り、何を取るか、その選択を適切に行えるよう、次回には、売買契約の具体的条項についてお話します。

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