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渉外関係 連載

3.渉外関係エトセトラ「性悪説に立って取引の過程をイメージ」

前回(初回)は、英文の国際契約書のドラフトを作成するに当たっての一つの効率的な手順についてお話ししました。これまでのお話だけでは、まだ抽象的ですので、第1段階として、貴社がこれから入ろうとする取引について、どういう事項について約束すべきか具体的に考えていただく上で、論点漏れを防ぐため、契約に盛り込むべき事項の類型化と相互の関係についてお話しします。その後、各論として、典型的な契約類型について、売買契約、代理店契約、ライセンス契約などの基本的な条項について、順に見ていきたいと思います。

契約は、大きく見て、(1)前文(recital)、(2)契約上の義務が履行されないときなどの異常時の規定、(3)契約上の義務が予定通り履行されている平常時の規定からなります。

(1)は、当事者が当該取引関係に入ることになった動機などを書きます。一般に前文に法的拘束力はありません。言い換えれば、紛争解決のため、裁判所は当該具体的文言を直接適用しません。もっとも、(2)、(3)の規定が曖昧で解釈上補充する必要があるときなど、前文は参照されることはありますので、注意してください。

(2)は、相手方の債務不履行またはこれに準ずる時の他方の権利及び他方が権利行使しない場合の取扱、相手方の損害賠償義務、紛争解決方法(言語、準拠法、管轄)など、契約の所期の目的が阻害されるようなときの対処方法が規定されています。その意味で、間接的に平常時の取引の確保(効力)に影響を及ぼしています。

(3)は、最も重要な部分です。平常時にどのような取引を行うか。すなわち、何と何とが対価関係になっているか。その上で、相互の履行の先後関係はどうするか(先履行、同時履行)。履行として認容される最低基準は何か、仕様を明確に定義してみる。その検査方法はどうするか。履行後の保証はどうするか。履行後欠陥(瑕疵)が発覚した場合はどうするか。給付と給付後の履行を確保(確実に)するための手当はどうするかなどです。

この部分の規定が曖昧で双方に都合のいいように解釈できるようでは、当初から円滑な取引関係は阻害されます。

そこで、メモで結構ですので、性悪説に則り、時間軸に沿って、軸の両側に両当事者を据え、取引の過程を具体的に描写していくことです。こうすることで、契約の相手方が約束を守らなかったとしても、貴社の損害を最小限に制限できるような、取引の手順が浮かび上がってきます。こうすることで、当該具体的な契約目的との関係で、何を子細かつ明確に規定すべきか、ボイラープレートで済ませるかがのメリハリが分かってきます。

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