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財産承継に役立つ制度

平成28年12月5日

8.種類株式について

種類株式とは

会社分割とは、会社の事業に関する権利・義務の全部又は一部を他の会社に包括承継させるもので、「吸収分割」(=株式会社又は合同会社が分割会社となって他の会社(承継会社)に権利義務を承継させる会社間の契約)と「新設分割」(=株式会社と合同会社が権利義務を分割により設立する会社(設立会社)に承継させるもの)の2種類があります。普通株式を保有する株主には、株主総会で意見を述べる権利(議決権)や、会社から利益配当を受ける権利(配当請求権)、会社が解散した際に残っている財産を受け取る権利(残余財産分配請求権)など、保有する株式数に応じて権利を有しています。また、株式は当事者の合意によって自由に譲渡できることが原則であり、株式数に応じて与えられる権利は平等です。

これら普通株式に対して、権利の内容が異なる株式を発行することができ、これを「種類株式」といいます。例えば、株主ごとに異なる配当ができる株式としたり、議決権を制限した株式とすることができるのです。会社の経営には興味がないが優先的に配当を受けたいといった個々の株主のニーズに応えることもでき、「種類株式」を上手く活用すれば、事業承継の場面で非常に有用なツールとなり得ます

 

種類株式を発行する場合、その株式の内容を定款で規定する必要があり、以下の9種類が法律で定められています(会社法108条1項各号に規定、以下出てくる条文はすべて会社法の条文)。

譲渡制限株式 会社の承認がなければ譲渡により取得できない旨の制限が付された株式
議決権制限株式 議決権の行使について、何らかの形で制限が付された株式
配当優先(劣後)株式 剰余金の配当に関して、優先(または劣後)の取扱がされる株式
残余財産分配優先(劣後)株式 会社の清算時における残余財産分配の内容に関して、優先(または劣後)の取扱がされる株式
取得請求権付株式 株主が、会社に対して当該株式の取得を請求することができる株式
取得条項付株式 会社が、一定の事由が生じたことを条件として当該株式を取得することができる株式
全部取得条項付株式 会社が、株主総会の特別決議によって、当該株式の全部を取得することができる株式
拒否権付株式 株主総会または取締役会の決議のほか、当該株式の株主を構成員とする種類株主総会の決議を得なければならないとされる株式
役員選解任権付株式 当該株式の株主を構成員とする種類株主総会において、取締役または監査役を選任(または解任)する権利が付された株式

上記のうち、「取得請求権付株式」、「取得条項付株式」及び「全部取得条項付株式」は、少しややこしいので、混同しないように注意が必要です。

「取得請求権付株式」と「取得条項付株式」は、「誰」が「誰」に対して会社による株式の取得を請求できるかが異なります(前者は「株主」が「会社」に対して、後者は「会社」が「株主」に対して)。「全部取得条項付株式」は、他の2つと比べて、「種類株式としてのみ」発行できるという点が異なります。つまり、既存の株式の全てについて全部取得条項付株式に変更することはできません(既存の株式の一部であれば可)。

株式の種類 取得請求権付株式 取得条項付株式 全部取得条項付株式
請求する側 株主 会社
請求される側 会社 株主
株式の内容 全部の株式の内容としても、種類株式としても発行できる 種類株式としてのみ発行できる
取得の事由 取得請求できる期間、条件は定款に定めることにより制限することが可能 あらかじめ定めた一定の事由の発生、または、会社が別に定める日の到来により取得できる 株主総会の特別決議によりいつでも取得できる
 

また、上記の株式は、「株式」自体に付属する権利の内容を異ならせる株式であるのに対し、特定の株主という「人」ごとに特定の権利(議決権、剰余金配当、残余財産分配の3つに限られる)を与えることができる株式として、属人的株式(通称「VIP株」とも呼ばれます)というものがあります(109条2項)。例えば、甲という株主に対してのみ、剰余金の配当と残余財産分配の権利は与えるが、議決権は与えないという株式を発行することができます。

種類株式発行のために必要な手続

種類株式を発行する方法としては、以下の3つが想定されます。

既存株式の全部の内容を変更する場合
既存の一部の種類株式についてのみ内容を変更する場合
(複数の種類株式すべてについて同じ内容に変更する場合を含む)
株式の種類を新たに追加する場合

労働契約が承継されるか否か、あるいは行うべき手続の内容は、「承継される事業に主として従事する労働者」(以下「主要従事労働者」という。)に該当するか否かにより、以下のとおり変わってきます。①~③すべてに共通する手続としては、いずれも定款の内容を変更する必要がありますので、株主総会の特別決議(議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の多数決が必要な決議)が必要となります(466条、309条2項11号)。

また、多くの場合に該当する手続として、当該種類株式の発行によって他の種類株式に損害を及ぼすおそれがある場合には、その種類株主総会の特別決議が必要となります。

さらに、反対株主による株式買取請求権が認められる場合もあります。

これら必要な決議等の手続についてまとめると以下の表のとおりです。

  ①の場合 ②の場合 ③の場合 株式買取請求権
株主総会の特別決議 株主総会の特別決議 種類株主総会の特別決議(※1) 株主総会の特別決議 種類株主総会の特別決議(※1)
譲渡制限株式 特殊決議(※2)が必要
+内容を変更する種類株式総会の特殊決議
議決権制限株式 ×
配当優先(劣後)株式
残余財産分配優先(劣後)株式
取得請求権付株式
取得条項付株式 株主全員の同意が必要
+内容を変更する種類株主全員の同意
全部取得条項付株式  
+内容を変更する種類株式総会の特殊決議
拒否権付株式 ×
役員選解任付株式

※1:他の種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合、当該種類株主について必要

※2:特殊決議とは、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上であって、当該株主の議決権の3分の2以上の多数決が必要な決議(なお、定款で上回る割合とすることは可能)

 

これら種類株式について、事業承継の場面で、具体的にどのように活用できるかについては、別稿にてご紹介いたします。

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