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財産承継に役立つ制度

平成28年10月31日

7.会社分割と従業員の承継について

はじめに

会社分割とは、会社の事業に関する権利・義務の全部又は一部を他の会社に包括承継させるもので、「吸収分割」(=株式会社又は合同会社が分割会社となって他の会社(承継会社)に権利義務を承継させる会社間の契約)と「新設分割」(=株式会社と合同会社が権利義務を分割により設立する会社(設立会社)に承継させるもの)の2種類があります。

会社分割においては、分割契約あるいは分割計画に記載された権利義務関係は一括して当然に承継会社(上記図では乙社)ないし設立会社(上記図では丙社)(以下、承継会社と設立会社を併せて「承継会社等」といいます。)に承継されることが原則です。そして、会社分割は、労働契約を含めて移転する権利義務の範囲を、分割会社が自由に決定できるため、債権者や従業員に及ぼす影響が大きいものです。そのため、債権者保護のための手続は厳格なものとされ、中でも労働者の権利との調整に関しては、労働契約承継法が制定され、同法8条に基づき、厚生労働大臣の詳細な指針が公表されています。

従業員の労働契約の承継について

労働契約が承継されるか否か、あるいは行うべき手続の内容は、「承継される事業に主として従事する労働者」(以下「主要従事労働者」という。)に該当するか否かにより、以下のとおり変わってきます。

主要従事労働者の判断基準

2で述べたように、労働契約が承継されるか否かは主要従事労働者に該当するか否かが1つのポイントとなりますので、その判定基準が問題となります。その基準は、労働契約承継法施行規則と厚生労働省による指針に規定されており、その内容をまとめると以下のとおりとなります。

原則 → 分割契約時または分割計画作成時(以下「契約時等」といいます。)で判断

契約時等に・・・

例外 → 締結時または作成時における判断が適しない以下のような場合

※育児等のための配置転換を希望する労働者が、締結日または作成時より前の分割会社との合意により承継事業に主として従事しないことが明らかであるものも含む

※採用内定者、育児等のための配置転換を希望する労働者が、締結日または作成後に承継事業に主として従事しないことが明らかであるものも含む

労働者に対する手続

(1)2で述べたように、①主要従事労働者、及び、②主要従事労働者以外の労働者で分割契約ないし分割計画に労働契約が承継される旨の定めがある労働者については、異議を申し出る権利がありますので、その機会を保証するために、事前に該当する労働者に対する通知が必要となります。

通知には、分割契約または分割計画に当該労働者の労働契約が承継される旨の規定があるか否か、異議の申し出ができる場合はその旨と異議申出期限、異議の申出先、担当者の氏名等とともに、承継される事業の概要や、分割会社及び承継会社等の商号・住所・事業内容・雇用予定の労働者数、分割の効力発生日、当該労働者について予定されている従事する業務の内容・就業場所等といった事柄を記載する必要があります。

また、通知に定める申出期限日は、株主総会決議の前日までの日を定め(株主総会の決議を要しない場合は分割契約日または分割計画作成日から2週間経過後の日)、通知日と申出期限日との間には少なくとも13日空ける必要があります。

異議を申し出る場合は、書面により氏名と、承継されないことあるいは承継されることについて反対である旨を記載して、異議の申出先に通知します。異議を申し出ることにより、分割契約または分割計画に記載された、承継されないあるいは承継されるという効果が承継会社等には承継されないことになります。

 

(2)分割会社が上記通知を怠った場合、①主要従事労働者の場合は、承継会社等に対して労働者たる地位の保全又は確認、分割会社に対してその雇用する労働者でないことの確認、を求めることができます。また、②主要従事労働者以外の労働者で分割契約ないし分割計画に労働契約が承継される旨の定めがある労働者の場合は、分割会社に対して労働者たる地位の保全又は確認、承継会社等に対してその雇用する労働者でないことの確認、をそれぞれ求めることができます。

 

(3)なお、労働者に対しては、通知を行う前に労働契約の承継について事前協議が必要です。事前協議を行わないと、「協議を全く行わなかった場合又は実質的にこれと同視しうる場合」に該当すると分割の無効原因となり得ます。

さらに、分割会社は労働契約の承継について労働者の理解と協力を得るように努める義務があります。この努力を怠った場合、前で述べた事前協議が不十分であることが事実上推認される可能性があります。

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