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財産承継に役立つ制度

平成28年9月6日

5.借地権に対する課税

土地賃借権は家や土地と違って形のないものなので、課税対象となるということを忘れがちです。

土地を借りてその上に家を建てていた場合、その家の所有者が死亡すると、家とともに土地賃借権も相続税の課税対象となります。これが意外と高額になることがあります。一方、土地賃借権付きの土地を相続する場合は、土地賃借権の評価額を控除することができます。つまり、土地を貸すことが地主にとっての相続税対策となる所以です。

 

土地賃借権を巡る課税の問題については、いくつかの局面(これから貸す(借りる)か、賃貸継続中の変更か、終了するところか、相続したか)で、下記のデータを抽出し、課税関係の分析をしなければなりません。特に、同族関係の場合は必須です

 

これを前提に、誰と誰の間に財産権の発生・変更・移転があったか、これに対する対価の移動があったか、誰に一定の期間の経済的利益の流入があったかを分析し、相続税法だけでなく、法人税法、所得税法の観点から、誰にいかなる納税義務が生じるか、検討しなければなりません。 きわめて、技術的で、かつ、入念な検討プロセスが必要となります。

 

本コラムでは、上のパターンのうち、土地賃借権の中核をなす借地借家法の適用される「借地権」について相続が発生した場合の評価方法に絞ってご案内します。

 

そもそも、「借地権」に対して相続税が課されるのは、財産だからです。土地所有権は、土地を使用収益処分することのできる権利です。これに対し、「借地権」は、土地を使用収益できる土地所有権の部分集合のような権利です。だから、「借地権」の設定に権利金等の対価を支払うことになるのです。これも財産権として金銭的に評価されます。「借地権」の設定により土地所有権の行使範囲が制限される関係にあります。そのイメージは、下記のようになります。

 

「借地権」については、期限の定めのないものが一般であり、この場合、借地借家法の保護により、借地人に債務不履行がない限り、事実上、地主からの解約はできません。だから、一旦借地権を設定すれば、時間の経過によって減価償却するなど、価値は低減しません。これに対し、定期借地権は、利用期限が定められているので、時間の経過によって価値が低減します。同じ土地でも20年間使えるのと、10年使えるので、その権利の価値が異なることは私たちの経済的感覚に合致すると思います。

 

また、商業地など土地が高度に利用されている地域では、土地所有権に占める「借地権」の価値の割合は高くなり、これに反比例して、地主が地代を受け取る権利である底地権の価値の割合は低くなります。

このような考え方をもとに、課税の公平や予測可能性の確保、租税行政の効率の確保のために、相続財産評価通達が計算方法をきめ細かく定めています。

「借地権」とは

相続税の計算上、借地権とは、建物所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいいます(借地借家法2条)。

相続税を考える上では、借地権を大きく3種類に分類することができます。

①普通借地権(借地借家法2条)

②定期借地権(借地借家法22条~24条)

③一時使用目的の借地権(借地借家法25条)

です。

定期借地権は、普通借地権と異なり、更新がありません。契約終了時に土地を返還する必要があります。

一時使用目的の借地権については、借地借家法が適用されません。借地借家法は、建物の所有を目的とする土地の賃借人の保護を趣旨としていますが、ここにいう建物所有目的は、居住や事業で長期間建物を利用することを前提としており、一時使用目的は例外という扱いになっています。

借地権の評価方法

 

借地権は、権利金などの対価を支払って設定されます。そして、一定範囲の地域ごとに、取引上の慣行として、通常、どれくらい権利金等の対価を支払うことになるかを、更地価格との関係で定めました。これが毎年7月に公表される借地権割合です。

但し、必ずしも画一的に権利金等の対価を支払わず、権利金等の対価を安くした分だけ地代を高く支払うこと(反比例の関係)もあるとして、このような場合には、借地権割合が小さくなると考えました。財産評価基本通達では、権利金等の価額の減額分×6%が、地代の増額分と同一価値であるとしています。つまり、権利金等の額を0にして、この減額に対応する地代を、通常の権利金等が授受された場合の地代に追加して、支払っていれば、この場合の借地権の割合が0にもなるのです(下記④無償返還の合意の届け出を参照。)。 

以下では、借地権の設定に際し、通常、権利金等の対価を支払う取引慣行があると認められる地域ごとの基本の計算式を中心に見ていきたいと思います。

① 普通借地権について

普通借地権の価額=土地の自用地としての評価額 × 借地権割合

つまり、借りている土地を更地として評価した場合、どれくらいの価額になるのかをまず算出します。これに、国税庁が定める借地権割合を掛けます。借地権割合は、国税庁のホームページに掲載されている路線価図と評価倍率表で確認することができます。例えば、事務所の周辺のもの(路線価図)をご覧ください。

道路上に楕円の図があり、その中に数字とアルファベットが記載されています。数字の部分が路線価で、アルファベットが借地権割合を示します。

図は心斎橋駅付近で商業施設やオフィスが密集している区域です。借地権割合は「B」、つまり、「80%」と設定されている道路が多いです。

図の上部を見て頂くと分かるように、借地権割合は「A」から「G」まで、「90%」から「30%」まで設定されています。住宅地では70%~60%、商業施設やオフィス街では90%~80%が多くなります。

  

一方で、借地権が設定された土地を評価する場合は、

土地の自用地としての評価額 × (1-借地権割合)

で算出します。

② 定期借地権について

定期借地権の価額=土地の自用地としての評価額×設定時の定期借地権割合×逓減率

上で述べましたとおり、定期借地権は、時間とともに価値が低減します。これを式にしたものです。  の部分が設定時の借地権の価値です。これが年数の経過とともに逓減率により価値が低減します。最初の年は1ですが、最終年には0になる逓減率をかけて、相続発生時の価額を算定できるようにしています。

③ 一時使用目的の借地権について

一時使用目的の借地権については、相続税法上評価の対象となる財産権となりません。

④ 無償返還の合意の届け出について

土地所有者が所轄の税務署長に対して、「土地の無償返還に関する届出書」 を提出している場合には、借地権割合は0%となります。

他方で、これに対する底地権の価額は、自用地の価額と同じになるはずですが、地主の事実上の負担に鑑み、自用地の価額の80%としています。

例外的に、借地権割合+底地価額割合=100%とならないケースです。

なお、使用貸借(無償の貸借)による場合は、もちろん借地権割合は0%、底地権割合は100%となります。

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