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民法の大幅改正について

平成30年10月15日

10.その10、保証に関する改正(3)

今回は、「事業用資金の貸付に対する保証」に関する改正事項についてご説明致します。法人であっても、特に中小企業の場合は、法人が事業資金を借入れる場合には経営者が保証人となる慣行があります。それは必ずしも好ましいとは言えない面もあり、平成25年に「経営者保証に関するガイドライン」が定められたこと、これには中小企業庁や金融庁が積極的に関与はしているものの、基本的には事業者団体間の取り決めであり、法的規制ではないことも申し上げました。勿論、関係事業者団体間の努力によって、経営者等による人的保証に依存しない事業資金貸付あるいは経営者が保証人になった場合にも酷な結果とならない方策が慣行化していくことは望ましいことです。

今回の民法改正に際して、経営者が事業資金の借入れを保証すること自体は、特に中小企業向けの融資において、主債務者(法人)の信用の補完や、経営の規律付けの観点から有用な場合もあるということで、規制の対象にはなりませんでした。他方、事業資金の借入れは金額も多額になり、経営者との個人的な情義等から保証人となった者が、想定外の多額の保証債務の履行を求められ、生活の破綻に追い込まれる事例が後を絶たないという実情に鑑み、できる限り抑制すべきであるが、一律禁止は行き過ぎであるということで、厳格な要件の下でのみ許容されることになりました。

規制の内容ですが、第一は「情報提供義務」の創設で、第二は「保証意思の確認制度の創設」です。前回申し上げましたように、私法上は「契約自由の原則」があります。リスクを承知の上で保証したのであればその責任を負うべきであるという考え方ですが、それを前提に、「リスクを承知して行った保証」と言えるようにしようという規制方法が採用されました。

第三者保証が酷な結果を招く原因の主たるものは、第三者が保証人になるに当たって、主債務者の財産状況等、保証のリスクに関する情報を十分に把握しておらず、それ故、真に保証意思があったと言えるのかが曖昧なままに保証契約が締結されてしまうからだと考えられます。

そこで、ます上記第一の点に関し、個人に対して事業上の債務の保証を委託する場合、主債務者は、① 財産及び収支の状況、②主債務以外の債務の有無、その債務の額及び履行状況、③担保として提供するもの(例えば、ある土地に抵当権を設定するのであれば、その内容)に関する情報を提供しなければならないことになりました。これまでは、情報提供は義務ではありませんでしたし、個人的情誼に基づいて保証人になる場合、聞きにくい事柄でもあったからです。

また、期限の利益喪失に関して債権者の保証人に対する情報提供義務 の規定も創設され、主債務者が期限の利益を喪失したときは、債権者は、保証人に対し、その喪失を知った時から2か月以内に、その旨を通知しなければならないことになりました。期限の利益というのは、概ね「分割払いできること」とご理解下さい。つまり期限の利益の喪失というのは、分割払いが出来なくなり、主債務者が、残額とそれに対する遅延損害金を一括で支払わねばならなくなったことを意味します。もっとも、一括払いになりましたということを教えて貰っても、一括払いになってからでは金額が多額になりますので、保証人としては、もし主債務者が支払えなくなってきたのであれば、分割払いの方法を採りたいところです。そのため、保証人が債権者に、主債務者の債務履行状況を問い合わせた場合、債権者は、主債務の元本、利息及び違約金等に関する次の情報を提供しなければならない旨も定められました。 ① 不履行の有無(弁済を怠っているかどうか)②残額、③残額のうち弁済期が到来しているものの額、です。これまでは、債権者は保証人にこういったことを教える義務がありませんでしたし、「個人情報」の問題が生じることもあり、聞いても教えて貰えませんでした。従って、これを義務化したことは一歩前進と言えますが、他方、この情報は、保証人が請求しない限り提供されませんので、保証人も主債務者の状況に十分気を配ることが必要です。

次に第二に関してですが、公証人による意思確認手続が新設されました。保証人になろうとする者が保証しようとしている主債務の具体的内容を認識していることや、保証契約を締結すれば保証人は保証債務を負担し、主債務が履行されなければ自らが保証債務を履行しなければならなくなることを理解しているかなどを検証し、保証契約のリスクを十分に理解した上で、相当の考慮をして保証契約を締結しようとしているか否かを見極めるためです。そのため公証人が保証意思を確認する際には、保証人が主債務者の財産状況について上記第一の情報提供義務に基づいてどのような情報の提供を受けたかも確認し、保証人がその情報も踏まえてリスクを十分に認識しているかを見極めることになります。

これらの規定は、事業資金の借入れに関する第三者保証自体を規制するというより、保証人になろうとする人に、保証契約にはどれだけのリスクがあるかを十分に認識して貰うためのものだと言えます。言い換えれば、リスクを十分に承知の上で保証したのであれば、それは自己責任だということに十分留意しておく必要があります。

ただ、「第三者」の範囲ですが、次の者は、「第三者」には入らず、経営者と同視されますので、注意して下さい。①主債務者が法人である場合の理事、取締役、執行役等、②主債務者が法人である場合の総株主の議決権の過半数を有する者等、③主債務者が個人である場合の共同事業者又は主債務者が行う事業に現に従事している主債務者の配偶者、です。このうち、特に、夫の事業を手伝っている奥さんは、事業の状況等に関しては常に目を配っている必要があります。資金繰り等について全てを夫任せ、夫の言うままに保証人にもなったりしていますと、一蓮托生になりかねません。夫婦だから一蓮托生で良いというお考えもあるでしょうが、保証人にさえならなければ少なくとも奥さんの財産が保全され、夫婦でやり直す資金が確保できる可能性も残り得るわけですから、この点も注意が必要です。

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