トップページ  >  連載  >  独占禁止法29

独占禁止法

令和元年11月6日

29.デジタル・プラットフォームと独禁法ー①デジタル・プラットフォームの光と影―

昭和生まれの人にとって、消費者が一般に買い物に行くといえば、商店街、市場、シッピングセンター、デパート等が主流でした。しかし、今、買い物といえば、まず、アマゾン、楽天、ヤフーなどのインターネットショッピングで欲しい商品と価格を検索するという方が、多いのではないでしょうか。一部活況を呈する商店街や市場を除き、多くの商店街や市場は衰退し、統計的にみても、店舗で物を売る伝統的な流通産業は売上を伸ばせていません。昨年、アメリカを代表する百貨店経営の大手シアーズが倒産しました。アマゾン・ドット・コムなどネット通販の台頭で来店客数が減少し、業績が下がったものと報じられています。これは世界的な傾向のようです。

ネット関連企業の台頭は、時価総額で見た世界のトップ10社の顔触れに顕著に表れています。10年前は、石油、製造、通信、金融がその主な顔触れでしたが、今や、アップル、アルファベット(Google)、アマゾン・ドット・コム、フェイス・ブックなど6社のデジタル・プラットフォーマーに入れ替わりました。

一般に、デジタル・プラットフォームとは、情報通信技術やデータを活用した場のことをいいます。その場を提供する事業者のことは、デジタル・プラットフォーマーと呼ばれます。デジタル・プラットフォームには、オンライン・ショッピング・モール、インターネット・オークション、オンライン・フリーマーケット、アプリケーション・マーケット、検索サービス、コンテンツ(映像、動画、音楽、電子書籍等)配信サービス、予約サービス、シェアリングエコノミー・プラットフォーム、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)、動画共有サービス、電子決済サービス等が含まれるとされています(公正取引委員会の報告)。

ネットショッピングに代表されるように、コンピュータの計算能力の向上、人工知能の発達、IOT(Internet of things、あらゆるモノがインターネットにつながる技術)を背景にデジタル技術によって爆発的に推進される産業の変化をもって、第四次産業革命とも称されます。

確かに、デジタル・プラットフォームは、革新的なビジネス等を生み出し続け、イノベーションの創出を担い、私たちの生活に多大な便益を提供してくれるようになりました。

しかし、その一方で、一部のデジタル・プラットフォーマーが巨体化し、そのビジネスモデルにおける業務遂行の中で、様々な問題が明らかになってきました。その典型は、圧倒的な力を背景に、取引先に不利な契約条件をのませることです。ここ数年、新聞に掲載されたいくつかのトピックを挙げてみます。

 

(対消費者)

・通販サイトなどで、利用者が購入したい商品を検索した際、一体どのような基準で上に出るのか、下に出るのか、運営企業が自らの都合で商品表示の順番を操作することは公正性に欠けるのではないか?

・利用目的を自社のウェブサイト等で知らせることなく、消費者から個人情報を取得するのは違法ではないか?

・消費者の同意を得ることなく消費者から取得した個人情報を第三者に提供するのは違法ではないか?

・個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに、サービスを利用させ、個人情報を提供させるのは違法ではないか?

・消費者からサービスを継続して利用する対価として取得する個人情報等とは別に、追加的に個人情報等を提供させるのは違法ではないか?

 

(対出店事業者等)

・自社の通販サイトでどこよりも安い価格を常に提示するように求めることは、不当な拘束にならないのか?

・何らの協議もなく、一方的に規約変更を押し付けるのは、濫用行為にならないか?

・出品事業者が原資を負担して全商品にポイントをけるという還元策を一方的に押し付けるのは、濫用行為ではないか?

・仕入先から値引き販売した額の一部を、協力金として補填させるのは、濫用行為ではないか?

 

確かに、いわれてみれば、消費者として、あるいは、事業者として、デジタル・プラットフォームを利用した際に問題を感じていた、何となくそう感じていたというような思い当たる節があるかと思われます。

 

公正取引委員会は、プラットフォーマーと呼ばれる巨大IT(情報技術)企業の取引の実態を調査し、10月31日、報告書を公表し、法令違反となる具体例を示しました。また、来年の通常国会では、「デジタル・プラットフォーマー取引透明化法案」の提出が予定されています。同法は、主に大規模な通販サイトやアプリストアを対象に、取引条件の開示などを求め、違反があれば改善命令や勧告が出されるということが骨子のようです。

 

次回からしばらく、今や、消費者として(BtoC)、また、事業者として(CtoC)の私たちの生活と切り離せなくなった、デジタル・プラットフォーマーの事業活動の問題について、主に、独禁法の観点から、紐解いていきたいと思います。

top