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独占禁止法

平成31年3月11日

28.帳合取引の義務づけに関する違法性判断基準

はじめに

前回に続いて、企業間の継続的取引契約について、独禁法の観点から、許される拘束と許されない拘束とを選別の検討をしたいと思います。

今回は、取引先事業者の取引先の制限に当たる、帳合取引に関する制限について見ていきたいと思います。

今回も、流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針(流通ガイドライン)が、数次の改正を経、行為類型ごとに違法性判断基準が明確になりました(直近の改正は平成29年6月16日)ので、これに準拠し、どのように判断されるか見ていきたいと思います。

帳合取引の義務付け

帳合取引の義務付け(メーカーが、卸売業者に対し、その販売先である小売業者が特定の卸売業者としか取引できないようにすること)(一般指定12項)は、以下の2つが典型例です。

以下のケースがこれまで問題になった典型的なケースです。帳合取引単独で問題になった審決等の事例について公表されているものはありませんが、再販売価格維持行為の効果を挙げるための手段として補足的に用いられ、価格維持効果があるため、排除措置命令がなされたケースがいくつかあります。

第一次育児用粉ミルク(和光堂)事件(昭和50年7月10日最高裁判決)より

(事案を簡略化しています。)

 

流通ガイドラインの規定

(1) 帳合取引の義務付け

帳合取引の義務付けは、取引先事業者の取引先の制限に当たります。取引先事業者の取引先の制限は、垂直的制限行為のうち非価格制限行為に当たります。帳合取引の場合は、販売先に対して、その下流の販売先を特定するものであり、帳合取引であるかの認定は容易です。

(2) その違法性判断基準はどうか。

公正競争阻害性があるか

以下のプラス・マイナスの側面から公正競争阻害性の有無を検討します。

+ 競争促進効果

新商品の販売促進、新規参入の容易化、品質やサービスの向上

- 競争阻害効果

創意工夫による事業活動の妨げ、ブランド間競争・ブランド内競争の減少・消滅、新規参入者の排除、消費者の商品選択の狭小化

公正競争阻害性の内容

 

価格維持効果

新規参入者や既存の競争者にとって、代替的な取引先を容易に確保することができなくなり、競争者が排除され、又は、その取引機会が減少するような状態をもたらすおそれが生じる場合をいいます。

 

価格維持効果

行為の相手方とその競争者間の競争が妨げられ、その行為の相手方がその意思で価格をある程度自由に左右し、その商品の価格を維持し又は引き上げることができるような状態をもたらすおそれが生じる場合をいいます。

 

公正競争阻害性の有無を判断するための判断資料

ブランド間競争の状況(市場集中度、商品特性、製品差別化の程度、流通経路、新規参入の難易性等)
ブランド内競争の状況(価格のバラツキの状況、当該商品を取り扱っている 流通業者等の業態等)
垂直的制限行為を行う事業者の市場における地位(市場シェア、順位、ブランド力等)
垂直的制限行為の対象となる取引先事業者の事業活動に及ぼす影響(制限の程度・態様等)
垂直的制限行為の対象となる取引先事業者の数及び市場における地位

ウ セーフハーバールール

前回まで説明してきた排他条件付取引、販売地域に関する制限、抱き合わせ販売と異なり、市場占有率により、適法とするルールはありません。

まとめ

帳合取引の義務付けについては、上記3(2)イの資料を基に、価格維持効果がないか、競争促進効果と競争阻害効果の比較衡量から結論を出します。上記2で述べましたように、帳合取引の義務付け単独では排除措置命令を発動するだけの反競争的効果の広がりがなかったが認められてこなかったことからと思われます。

帳合取引の義務付けついては、実際、上記の和光堂事件に見られるように、大きなメーカーや卸売業者から下流の卸売業者又は小売業者等が、ブランド内の競争をなくし、価格維持の目的を達成するための補助的ツールとして用いられ、必ずしも上流の大きな事業者VS下流の小さな事業者の利害の対立又は前者による後者の利益の搾取という構図は成り立ちません。むしろ、集団として価格を維持し、傘下の各事業者が一定のマージンを確保できるよう意思を通じているということがある点に特徴があります。特に、現状では、先行して投資しビジネスモデルを形成してきた実店舗売買をしている小売業者において、メーカー等が新興のネット販売やディスカウントの小売業者に対して、卸売りして欲しくないという誘因が背景にあります。その意味で、ある商品について、大勢において、下流の商流にある事業者が自己の利益を守る手段として、独禁法に基づいて、契約条項の無効等を主張していくことはありません。もっとも、再販売価格の拘束や帳合取引が取引商流にかかわる大半の事業者の意向であるからといって、独禁法に反しないということはありません。当事者の利益になっても、上記の公正競争阻害性が認められれば違法となります。因みに、和光堂事件で、Aは、公正取引委員会の審判当時、Aの競争相手の企業2社の占有率は約76%で、Aの市場占有率は約10%に過ぎないところ、対抗手段としてやむを得ないと反論しましたが、認められていません。

これに対して、大勢から見れば、異端視されたりするような、マイノリティの事業者が、メーカー等から、指定業者以外(例えば、ネット販売事業者)と取引したことをもって契約違反として継続的取引契約が解除された場合に同制約が独禁法に反し無効であることを主張したり、先んじて、独禁法に基づいて契約条項やこれまでの取引のルーティンの改訂を求めたりという場面で、ガイドラインを役立てることができると思われます。その際、独禁法上正当と認められる理由があるかが、争点になります。

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