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独占禁止法

2019年2月13日

27.抱き合わせ販売の違法性判断基準

はじめに

前回に続いて、企業間の継続的取引契約について、独禁法の観点から、許される拘束と許されない拘束とを選別の検討をしたいと思います。

今回は、取引先事業者の事業活動に対する制限の代表的な例である、抱き合わせ販売に関する制限について見ていきたいと思います。

今回も、流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針(流通ガイドライン)が、数次の改正を経、行為類型ごとに違法性判断基準が明確になりました(直近の改正は平成29年6月16日)ので、これに準拠し、どのように判断されるか見ていきたいと思います。

抱き合わせ販売

抱き合わせ販売(主たる商品と一緒に従たる商品をも抱き合わせて販売すること)(一般指定10項)は、以下の2つが典型例です。

以下のケースがこれまで問題になった典型的なケースです。

 

① 抱き合わされる商品の取引分野における自由競争の減殺(競争者被害型)

甲は、ワードの供給の拡大のため、エクセルのみの販売を拒否し、ワードを抱き合わせた。

     

(日本マイクロソフト抱き合わせ事件(平成10年12月14日公取委勧告審決)より)

 

② 顧客の選択の自由を侵害することによる競争手段の不公正さ(不用商品型)

甲は、ドラクエⅣに対する小売業者の需要が供給を上回っていることを利用し、在庫ソフトを抱き合わせた。

(藤田屋事件(平成4年2月28日公取委審判審決)より)

流通ガイドラインの規定

抱き合わせ販売は、事業者による取引先事業者の事業活動に対する制限に当たります。事業者による取引先事業者の事業活動に対する制限は、垂直的制限行為のうち非価格制限行為に当たります。抱き合わせ販売の場合は、そもそも抱き合わせ販売といえるかの判断が必要になります。その手順を示せば以下のようになります。

(1) 抱き合せ販売か

ア ある商品とともに購入している商品が「他の商品」といえるか。

それぞれの商品が独立して取引の対象になるといえるかです。右の手袋と左の手袋は機能的にみて独立した取引の対象にはなりません。しかし、上のように、表計算ソフトとワープロソフトとは独立して取引の対象になるのは明らかです。もっとも、売り出しの頃のカメラ機能付き携帯電話(これ自体が一つの独立した取引の対象)など少し判断が難しい場合もあります。

イ 「購入させる」といえるか。

契約書に書いてあるかということも判断の資料になりますが、客観的にみて、少なからぬ顧客が他の商品の購入をしていることと、その購入が自発的と認められないことが必要です。リベートやペナルティなど種々の状況証拠を通じて認定されることになります。

(2) 抱き合わせ販売に当たるとして、その違法性判断基準はどうか。

公正競争阻害性があるか

以下のプラス・マイナスの側面から公正競争阻害性の有無を検討します。

+ 競争促進効果

新商品の販売促進、新規参入の容易化、品質やサービスの向上

- 競争阻害効果

創意工夫による事業活動の妨げ、ブランド間競争・ブランド内競争の減少・消滅、新規参入者の排除、消費者の商品選択の狭小化

公正競争阻害性の内容

 

市場閉鎖効果

新規参入者や既存の競争者にとって、代替的な取引先を容易に確保することができなくなり、競争者が排除され、又は、その取引機会が減少するような状態をもたらすおそれが生じる場合をいいます。

 

価格維持効果

行為の相手方とその競争者間の競争が妨げられ、その行為の相手方がその意思で価格をある程度自由に左右し、その商品の価格を維持し又は引き上げることができるような状態をもたらすおそれが生じる場合をいいます。

 

なお、流通ガイドラインにおいて抱き合わせ販売の違法性判断の説明では、上記2で挙げた競争手段の不公正さの観点からの公正競争阻害性が言及されていませんが、この観点からの検討も必要です。

公正競争阻害性の有無を判断するための判断資料

ブランド間競争の状況(市場集中度、商品特性、製品差別化の程度、流通経路、新規参入の難易性等)
ブランド内競争の状況(価格のバラツキの状況、当該商品を取り扱っている 流通業者等の業態等)
垂直的制限行為を行う事業者の市場における地位(市場シェア、順位、ブランド力等)
垂直的制限行為の対象となる取引先事業者の事業活動に及ぼす影響(制限の程度・態様等)
垂直的制限行為の対象となる取引先事業者の数及び市場における地位

ウ セーフハーバールール

同じ行為でも、有力な事業者が行えば、違法となるおそれがあるが、他方、市場におけるシェアが20%以下である事業者や新規参入者がこれらの行為を行う場合には、そのおそれはない(「市場における有力な事業者」基準)とされます。

なお、ここにいう市場とは、制限の対象となる商品と機能・効用が同様であり、地理的条件、取引先との関係等から相互に競争関係にある商品の市場をいいます。つまり、制限行為者の商品や役務と喰うか喰われるかの関係に立つ空間的な広がりです。市場の画定は、基本的には、需要者にとっての代替性という観点から判断されますが、必要に応じて供給者にとっての代替性という観点も考慮されます。

まとめ

自社が試みようとする抱き合わせ販売あるいは相手から求められた抱き合わせ販売と認められる販売方法について、まずは、市場シェアが20%以下であるかの検討が先決問題です。もし、市場シェアが20%以下となれば、細かな検討を行う必要はありません。

もっとも、市場シェアの判断が場合によっては困難なことは前回申し上げたとおりです。

仮に、市場シェアが20%を超え又はその恐れがあるとしても、それだけでは独禁法上違法とはなりません。今度は、上記3(2)イの資料を基に、市場閉鎖効果がないか、競争促進効果と競争阻害効果の比較衡量から結論を出します。競争手段の不公正さも別途問題になります。

次に、仮に形式的には公正競争阻害性があるとしても、独禁法上正当と認められる理由がある場合があれば違法とはなりません。

抱き合わせ販売に関する制限については、実際、上記の日本マイクロソフト事件に見られるように、大きなメーカーや卸売業者から下流の卸売業者又は小売業者等が、必ずしも仕入れる必要のない商品を仕入れさせられるように、多くの企業にとって、拘束する側ではなく、拘束される側の問題として扱われると思います。具体的には、メーカーから、組売りされている製品の購入を拒否したことをもって契約違反として継続的取引契約が解除された場合に同制約が独禁法に反し無効であることを主張したり、先んじて、独禁法に基づいて契約条項やこれまでの取引のルーティンの改訂を求めたりという場面で、ガイドラインを役立てることができると思われます。

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