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独占禁止法

2019年1月13日

26.地域制限取引の違法性判断基準

はじめに

前回に続いて、企業間の継続的取引契約について、独禁法の観点から、許される拘束と許されない拘束とを選別の検討をしたいと思います。

今回は、拘束条件付取引のうち、取引先事業者の事業活動に対する制限の代表的な例である、販売地域に関する制限について見ていきたいと思います。

今回も、流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針(流通ガイドライン)が、数次の改正を経、行為類型ごとに違法性判断基準が明確になりました(直近の改正は平成29年6月16日)ので、これに準拠し、どのように判断されるか見ていきたいと思います。

販売地域に関する制限

販売地域に関する制限(メーカー等が自己の商品の販売業者の営業地域を制限する取引)(一般指定12項)は、以下の2つが典型例です。

2つのタイプのテリトリー制:

① 責任地域制

販売業者に割り当てられた地域内での販売活動を行うことを義務付ける。

     

② ロケーション制(販売拠点制)

販売拠点の設置場所を一定地域内に制限する。

具体的に問題になりうるケース

上記2①及び②のテリトリー制において、その図にあるように、取引相手であるA、B…間のテリトリーにおいて、商品の流通がクロスしているような場合、具体的には、甲とAとの取引契約(または、事実上の制約)において、AがBのテリトリーの消費者に対して、販売活動が制限されていないこと、Bにおいても同様である場合には、公正な競争が阻害されないとして、特に問題視されません。

しかし、AがBのテリトリー内の消費者(需要者)に対する商品の販売活動が禁止されたり(厳格な地域制限)、AがBのテリトリー内の消費者(需要者)からの商品の購入申込みに対して、受付が禁止される場合(地域外顧客への受動的販売の制限)(下図の破線部分参照)には、ブランド内の競争が減少・消滅するなどとして公正な競争を阻害すること(現象的には、制約がなかった時と比べて価格が高くなる。)があるとされています。

なお、事業者が直接の取引先事業者をしてその取引の相手方(直接の取引相手の取引相手ということ)の(例えばメーカーが卸売業者をして小売業者の)販売地域を制限させる場合にも当てはまるとされています。

例えば、富士エックスレイ(富士写真フィルムは、当時国内販売額の55%占め、その完全子会社。)が、エックス線フィルムの販売に当たり、正当な理由がないのに、その取引先販売業者に対し、その取扱商品、販売地域及び販売価格を拘束する条件をつけて当該販売業者と取引したことに対して排除措置命令がなされた事件がある(富士写真フィルム事件)。

流通ガイドラインの規定

販売地域に関する制限は、事業者による取引先事業者の事業活動に対する制限に当たります。事業者による取引先事業者の事業活動に対する制限は、垂直的制限行為のうち非価格制限行為に当たります。販売地域に関する制限の違法性判断基準は以下のようになります。

公正競争阻害性があるか

以下のプラス・マイナスの側面から公正競争阻害性の有無を検討します。

+ 競争促進効果

新商品の販売促進、新規参入の容易化、品質やサービスの向上

- 競争阻害効果

創意工夫による事業活動の妨げ、ブランド間競争ブランド内競争の減少・消滅、新規参入者の排除、消費者の商品選択の狭小化

公正競争阻害性の内容

価格維持効果

その行為の相手方とその競争者間の競争が妨げられ、その行為の相手方がその意思で価格をある程度自由に左右し、その商品の価格を維持し又は引き上げることができるような状態をもたらすおそれが生じる場合をいいます。

公正競争阻害性の有無を判断するための判断資料

ブランド間競争の状況(市場集中度、商品特性、製品差別化の程度、流通経路、新規参入の難易性等)
ブランド内競争の状況(価格のバラツキの状況、当該商品を取り扱っている 流通業者等の業態等)
垂直的制限行為を行う事業者の市場における地位(市場シェア、順位、ブランド力等)
垂直的制限行為の対象となる取引先事業者の事業活動に及ぼす影響(制限の程度・態様等)
垂直的制限行為の対象となる取引先事業者の数及び市場における地位

ウ セーフハーバールール

同じ行為でも、有力な事業者が行えば、違法となるおそれがあるが、他方、市場におけるシェアが20%以下である事業者や新規参入者がこれらの行為を行う場合には、そのおそれはありません(「市場における有力な事業者」基準)。

なお、ここにいう市場とは、制限の対象となる商品と機能・効用が同様であり、地理的条件、取引先との関係等から相互に競争関係にある商品の市場をいいます。つまり、制限行為者の商品や役務と喰うか喰われるかの関係に立つ空間的な広がりです。市場の画定は、基本的には、需要者にとっての代替性という観点から判断されますが、必要に応じて供給者にとっての代替性という観点も考慮されます。

まとめ

販売地域に関する制限について、まずは、市場シェアが20%以下であるかの検討が先決問題です。もし、市場シェアが20%以下となれば、細かな検討を行う必要はありません。

もっとも、市場シェアの判断が場合によっては困難なことは前回申し上げたとおりです。

仮に、市場シェアが20%を超え又はその恐れがあるとしても、それだけでは独禁法上違法とはなりません。今度は、上記4イの資料を基に、価格維持効果がないか、競争促進効果と競争阻害効果の比較衡量から結論を出します。

次に、仮に形式的には公正競争阻害性があるとしても、独禁法上正当と認められる理由がある場合があれば違法とはなりませんが、販売地域制限については、その合理性が認められることは難しいように思えます。

販売地域に関する制限については、実際、日本における大半の企業からみて、拘束する側ではなく、拘束される側の問題として扱われると思います。具体的には、メーカーから、地域外からの需要者に対して商品を販売したことをもって契約違反として継続的取引契約が解除された場合に同制約が独禁法に反し無効であることを主張したり、先んじて、独禁法に基づいて契約条項の改訂を求めたりという場面で、ガイドラインを役立てることができると思われます。

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