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独占禁止法

平成30年12月11日

25.再販価格維持行為の違法性判断基準

はじめに

前回に続いて、企業間の継続的取引契約について、独禁法の観点から、許される拘束と許されない拘束とを選別の検討をしたいと思います。

今回は、拘束条件付取引ののれん分け的な存在である再販価格維持行為について、見ていきたいと思います。

今回も、流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針(流通ガイドライン)が、数次の改正を経、行為類型ごとに違法性判断基準が明確になりました(直近の改正は平成29年6月16日)ので、これに準拠し、どのように判断されるか見ていきたいと思います。

再販売価格維持行為

再販価格維持行為とは、(イ)取引の相手方に対し販売する商品の販売価格を定めてこれを維持させること、及び、(ロ)相手方の転売先の販売価格について同様の拘束をすることです(独禁法2条9項4号)。

矢印(グレー)が「取引の相手方に対し」であり、矢印(イエロー)は、「取引の相手方に対し」が間接的な場合です。破線の横長楕円は、対象となる「販売価格」に当たります。

流通ガイドラインの規定

再販価格維持行為は、事業者による取引先事業者の事業活動に対する制限に当たります。事業者による取引先事業者の事業活動に対する制限は、垂直的制限行為のうち価格制限行為に当たります。

流通業者の販売価格を拘束する場合には、流通業者間の価格競争を減少・消滅させ、通常、競争阻害効果が大きいことから、原則として、不公正な取引方法として違法になります。

もっとも、例外的に、これが許容される場合もありうること(「正当な理由」)を認めています。

しかし、価格の自主的な決定は、市場の基本的な機能であり、極めて厳格な条件のもとに、許容することにしています。

よって、再販価格維持行為の違法性判断基準は、むしろ、違法性阻却事由の有無の判断基準といえます。

ア ガイドラインでは、以下のように規定しています。

①必要性

メーカーによる自社商品の再販売価格の拘束によって実際に競争促進効果が生じてブランド間競争が促進され、それによってその商品の需要が増大し、消費者の利益の増進が図られること

②許容性(相当性)

競争促進効果が、再販売価格の拘束以外のより競争阻害的でない他の方法によっては生じ得ないものである場合において、かつ、必要な範囲及び必要な期間に限ること

イ 公正競争阻害性の有無を判断するための判断資料

ブランド間競争の状況(市場集中度、商品特性、製品差別化の程度、流通経路、新規参入の難易性等)
ブランド内競争の状況(価格のバラツキの状況、当該商品を取り扱っている 流通業者等の業態等)
垂直的制限行為を行う事業者の市場における地位(市場シェア、順位、ブランド力等)
垂直的制限行為の対象となる取引先事業者の事業活動に及ぼす影響(制限の程 度・態様等)
垂直的制限行為の対象となる取引先事業者の数及び市場における地位

まとめ

再販価格維持行為については、市場シェアによるセーフハーバーがなく、かつ、原則違法として扱われるので、実効性をもって実施するためには、上記ガイドラインの基準をクリアーできるかにかかっています。

ガイドラインの書きぶりやパブリックコメントに対する回答からは、当面、新製品導入時に広告宣伝費等を投入し、顧客に周知させても、後発の他の事業者、特に、店舗や販売員を持たずにインターネットで安売りする事業者によって、その成果や環境にフリーライドされては、事業者に事業開拓のインセンティブがなくなり、市場は発展しなくなってしまうので、最小限の物理的・時間的制限のみ認めることとしているものと思われます。

よって、現状では、特定の事業者が、市場シェアがいかに小さくても、恒常的に再販価格維持行為を行うことはいかなる場合も正当化されないスタンスと思われます。

業界団体や関係者から、再販価格維持行為の効能についてもう少し積極的に評価するような求めもありましたが、最も重要な競争のパラメーターである第三者の値付けに口を出すこと、即、違法であること、また、著名な和光堂最高裁判決を援用し、ブランド間競争が活発化しても、「必ずしも相手方たる当該商品の販売業者間において自由な価格競争が行われた場合(ブランド内競争)と同様な経済上の効果をもたらすものでない」という、ドグマ的なものに縛られ、今後の様子を見ていくということのようです。

最後に、前回、仮に形式的には公正競争阻害性があるとしても、独禁法上正当と認められる理由がある場合には違法とはなりませんと言いました。しかし、恒常的に再販価格を拘束することに、やはり、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進」する実質的な理由は見つけにくいと思われます。

フリーライド等に対する問題は、別途、許容され得る合理的な対処をせよということです。

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