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独占禁止法

平成30年11月6日

24.排他条件付取引の違法性判断基準

はじめに

経済活動の基本をなす取引は、基本的に継続的活動を前提にするものです。材料の調達・生産・販売の過程で継続的取引を維持することが企業の利益確保に結び付きます。特に、継続的取引契約が企業間の取引の基本になります。

そこで、取引を行う相互間の取り決めである契約が必要になります。契約は、当事者を拘束するものであり、独禁法の観点から、許される拘束と許されない拘束とを選別する必要があります。独禁法が禁止しているのは、一定の契約条項そのものではなく、事実たる行為です。しかし、契約条項があることで事実たる行為が現出したりするので、以下は、便宜上、契約条項≒行為又は取引として話を進めていきます。

そこで、以前、「22.継続的な取引契約締結に際し、独禁法の拘束条件付取引(一般指定12項)として無効にされないためのチェック事項」では、契約条項のうち、拘束条件付取引のカテゴリーに入るものについて、簡単な検討チャートを用いて説明しました。

しかし、具体的にこのような契約条項を取引先から求められているけれどもこれは違法ではないのか、このような契約条項を順守するよう取引先に求めたいが、これは適法か、という問いに対して、具体的なアテハメ処理手順はわかりにくいものです。

そこで、これから実務上よく相談を受けたり、見かけたりする契約条項について、個別に、どのようにして判断してくか、シリーズで、より具体的に説明していきたいと思います。

なお、独禁法上の概念上、排他条件付取引及び再販価格維持行為は、概念的には拘束条件付取引に含まれるもののこれから独立して規制されている類型なので、これら全体を一つのファミリーとして、その中から具体的なケースをピックアップしていきたいと思います。

また、流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針(流通ガイドライン)は、数次の改正を経、行為類型ごとに違法性判断基準が明確になりました(直近の改正は平成29年6月16日)ので、これに準拠し、どのように判断されるか見ていきたいと思います。

排他条件付取引

排他条件付取引(自己以外の全ての者と取引しないことを条件とする取引)(一般指定11項)が典型例です。

排他的供給取引:供給者が相手方に対し自己の商品のみを販売することを条件として取引する。

排他的受入取引(一手販売契約): 供給を受ける者(買い手)が相手方からすべての商品を一手に受け入れることを条件として取引する。

流通ガイドラインの規定

排他条件付取引は、事業者による取引先事業者の事業活動に対する制限に当たります。事業者による取引先事業者の事業活動に対する制限は、垂直的制限行為のうち非価格制限行為に当たります。排他条件付取引の違法性判断基準は以下のようになります。

ア 公正競争阻害性があるか

以下のプラス・マイナスの側面から公正競争阻害性の有無を検討します。

+ 競争促進効果

新商品の販売促進、新規参入の容易化、品質やサービスの向上

- 競争阻害効果

創意工夫による事業活動の妨げ、ブランド間競争・ブランド内競争の減少・消滅、新規参入者の排除、消費者の商品選択の狭小化

公正競争阻害性の内容

市場閉鎖効果

新規参入者や既存の競争者にとって、代替的な取引先を容易に確保することができなくなり、競争者が排除され、又は、その取引機会が減少するような状態をもたらすおそれが生じる場合をいいます。

イ 公正競争阻害性の有無を判断するための判断資料

ブランド間競争の状況(市場集中度、商品特性、製品差別化の程度、流通経路、新規参入の難易性等)
ブランド内競争の状況(価格のバラツキの状況、当該商品を取り扱っている 流通業者等の業態等)
垂直的制限行為を行う事業者の市場における地位(市場シェア、順位、ブランド力等)
垂直的制限行為の対象となる取引先事業者の事業活動に及ぼす影響(制限の程 度・態様等)
垂直的制限行為の対象となる取引先事業者の数及び市場における地位

ウ セーフハーバールール

同じ行為でも、有力な事業者が行えば、違法となるおそれがあるが、他方、市場におけるシェアが20%以下である事業者や新規参入者がこれらの行為を行う場合には、そのおそれはない(「市場における有力な事業者」基準)。

なお、ここにいう市場とは、制限の対象となる商品と機能・効用が同様であり、地理的条件,取引先との関係等から相互に競争関係にある商品の市場をいいます。つまり、制限行為者の商品や役務と喰うか喰われるかの関係に立つ空間的な広がりです。市場の画定は、基本的には、需要者にとっての代替性という観点から判断されますが、必要に応じて供給者にとっての代替性という観点も考慮されます。

まとめ

自社が設定しようとする排他条件あるいは取引相手が設定しようとする排他条件について、まずは、市場シェアが20%以下であるかの検討が先決問題です。もし、市場シェアが20%以下となれば、細かな検討を行う必要はありません。

もっとも、市場シェアの判断は、言うほど単純ではありません。独禁法の適用上、市場は、一つの商品や役務について一つに限らず、重層的に存在しうるからです。例えば、同じ商品でも小口需要者向けと大口需要者向けで市場が別個に画定されたりします。製品の差別化が極端に進み、他のブランドの同様の機能・効用を有する商品と代替性がないということになれば、そのブランドが一つの市場として画定されることもあり得ます。市場を画定するにあたっては、問題となる商品又は役務の機能・効用に始まり、実際の商流、サプライチェーン、差別化の程度等も考慮して、多面的に検討すべきです。

仮に、市場シェアが20%を超え又はその恐れがあるとしても、それだけでは独禁法上違法とはなりません。今度は、上記3イの資料を基に、市場閉鎖効果がないか、競争促進効果と競争阻害効果の比較衡量から結論を出します。

次に、仮に形式的には公正競争阻害性があるとしても、独禁法上正当と認められる理由がある場合には違法とはなりません。例えば、流通ガイドラインでは、完成品メーカーが部品メーカーに対し、ノウハウを供与して部品を製造させている場合で、そのノウハウの秘密を保持するために自己にのみ販売させる場合などを例示しています。すなわち、形式な公正競争阻害性がすべて独禁法違反につながるわけではなく、最終的に、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進」する実質的な理由がある場合、その違法性は阻却され得ます。

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