トップページ  >  連載  >  独占禁止法21

独占禁止法

平成27年11月30日

21.独占禁止法と消費者法における事業者

経済とは

先だって、独禁法・消費者法と事業者の関係について、お話する機会がありましたので、今回は、両法律の規制の対象になる事業者は、何がどのように、規制されるかについて、両法律のきほんの「き」に遡って、対比しながら、お話したいと思います。特に、独占禁止法は耳慣れない法律ですが、実は日本経済の重要な基本法であり、身近な法律であることもお話したいと思います。

まず、両法律の前提となる経済の理解から始めます。経済とは、「世の中を治め、人民を救う」ことを意味する経世済民(若しくは経国済民)の略語であり、中国の古典での使用が初めてとされています(東晋(4世紀)、葛洪)。

しかし、現代の意味は少し広くなっています。経産省の説明では、「お金」、「モノ」、「サービス」の流れのことといっています。言い換えれば、企業、消費者、政府の各主体が、モノ又はサービスと対価との交換を通じて、付加価値を得ていくプロセスということになります。

独占禁止法と事業者

NHKの朝や日曜日のドラマで放映されていますように、元はと言えば、日本経済の近代化は、西洋諸国から遅れていたので、官が主導であり、法的枠組みは、民間の自由な競争というよりも、上からの統制により、経済を発展させようとするタイプのものでした。終戦前、その行きついたところが、悪く言えば、全体主義経済とか、統制経済ということでした。

これに対して、歴史の教訓や政治的な理由から、この枠組みは180度方向転換しました。民の自由競争によってこそ国民が豊かになるという発想の転換です。すなわち、企業や消費者が、持っている能力を最大限に発揮できる社会を実現することが、交換を通じて、国民一人一人がより豊かになる、という考え方です。独占禁止法(「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」)が、日本の経済の法的パラダイム(法的枠組み)を基礎づけています。同法1条にその論理構造が表れています。少しわかりにくいので、これをチャートで分節すれば、以下のようなピラミッド構造になります。

国民経済の民主的で健全な発達を促進、すなわち、消費者が、市場にある商品・役務についての情報を得(知らされる権利)、廉価良質な商品・役務を選択できる(選ぶ権利)ような経済秩序を造っていくことを目標としています。

そのための手段が、公正かつ自由な競争、すなわち、市場支配力を行使しようとする者がいたとしても、その行使を抑制できるのに十分な競争を確保、維持することなのです。

この公正かつ自由な競争を確保・維持するために、独禁法は、事業者に対して、 公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにするため、一定の行為を禁止しています。

実際の運用の局面では、市場支配力を濫用するだけの力のある企業とその濫用により割を食う企業との関係で、濫用企業に原状回復を求めることになります。

消費者法と事業者

独禁法では、事業者の競争関係を規制することで、消費者の利益を確保することになっていますが、消費者法では、事業者と消費者の関係を直接規制することで、消費者の利益を確保することにしています。

消費者法は、事業者に対して、消費者が、①経済面、知識、情報、判断力が劣る、②傷つきやすい、③負担を転嫁できない、つまり、事業者と対等でない、弱いから格別の配慮を強制しています。

※1:行政規制とは、行政が事業者に対して、一定の行為を命ずること、
   例えば、開業規制、広告内容の規制、書面の交付義務など

※2:民事規制とは、消費者との契約に、消費者保護のために介入こと、
   例えば、一定の場合クーリングオフにより契約を解除できる

まとめ

独占禁止法も消費者法も、究極目的は、消費者の利益の保護にあります。しかし、そのアプローチが異なります。独占禁止法は、事業者の競争方法について、公正な競争秩序の確保・維持の観点から、アンフェア―とされる事業活動を「競争」とは認めず、やめさせること(排除)により、消費者法は、契約の拘束力を認めず、消費者に契約解除を認めることにより、究極的に消費者の利益の保護を図っています。

こう見れば、独占禁止法が経済の大枠が決めて、それでも足りない分について消費者法が個々に修正している、というふうにも捉えることができると思います。

個々の規制法の文言や内容にばかり気をとられていると、その法令の根本となる哲学が分からなくなったりします。そのようなときに、この規制はどっちの系譜かを考えることで、少し、理解しやすくなるのではないかと思います。

top