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独占禁止法

平成26年6月30日

18.フランチャイジーが見切り販売を制限されたことについてフランチャイザーに対する損害賠償請求が認められたケース-独禁法25条を利用して利益を回復する-

独禁法と私権の実現

本件は、セブンイレブンのフランチャイザーがフランチャイジーに対して、デイリー商品見切り販売を制限していたことについて、フランチャイジーが損害賠償請求をした事件です。

本件の特徴は、よく見られる契約責任または不法行為責任に基づく損害賠償請求の方法によるのではなく、公正取引委員会によってなされた排除措置命令が確定したことを利用して、請求を組み立てたことにあります。

独禁法の基本は、公正かつ自由な競争秩序を確保するため、行政権力による市場への是正介入であり、行政処分であります。つまり、タテの関係です。しかし、補完的にヨコの関係によってもこの秩序の維持を担わせています。

その一つが独禁法25条に基づく損害賠償請求制度です。被害者は、公正取引委員会の認定した事実を前提に容易に違反行為の立証ができるようになっています。

事案の概要

公正取引委員会は、セブンイレブンのフランチャイザー(以下、「本部」という。)が、そのフランチャイジー(以下、「加盟店」といいます。)に対して、推奨商品のうちデイリー商品に係る見切り販売の制限をしていたことが、一般指定14条4号(H21改正前)の優越的地位の濫用に当たるとして、排除措置命令を発し、同命令は確定していました。

ついで、加盟店4 名(以下、「原告ら」といいます。)が本部に対して、見切り販売妨害行為によって損害を被ったとして、独占禁止法25 条に基づき、損害賠償を請求しました(以下、「本件訴訟」といいます。)。

(時系列)

H21.6.22
本部が加盟店に対して、見切り販売を制限させる行為が、一般指定14項4 号の優越的地位の濫用に当たるとして、排除措置命令。
H21.8.21
同命令が確定。
H21.8
原告ら、独禁法25 条に基づく損害賠償請求提訴

(1)原告らは、本部の役務に対してセブン-イレブン・チャージ(以下「チャージ」という。)(55%~80%)を支払う。チャージは、本部から原告らに対して毎月送付される損益計算書に記載されている「売上総利益」に対してチャージ率を乗じて算定される。売上総利益の金額は、「売上」の合計金額から「純売上原価」及び棚卸ロス原価等が控除されたもの)を差し引いた金額。つまり、本部は、廃棄ロス及び棚卸ロスの多寡の影響を受けずに、チャージを徴収することができる

(2)本部の開示した標準小売価格(以下、「推奨価格」ということがある。)で販売することを強制されない、商品の販売価格を自らの判断で決定できる、というのが契約内容。

裁判所の判断

① 本部の損害賠償責任について

(1) 審理の対象となる損害賠償請求権の範囲

独禁法25条が特別な規定だから、排除措置命令において違反行為と認定された行為に基づいて発生するものに限られる

本件では、本部が加盟店に対し、デイリー商品を推奨価格で販売するように求める助言・指導の域を超えて、見切り販売が加盟店契約に違反する行為であると指摘し、あるいは、見切り販売を行うことより加盟店契約の更新ができなくなるなどの不利益が生ずることを申し向けるなどして、経営上の判断に影響を及ぼす事実上の強制を加え、これにより加盟店が有する商品の価格決定権の行使が妨げられ、見切り販売の取りやめを余儀なくさせていると評価できる場合である。

(2) (1)に当てはまる各違法行為の認定

原告らそれぞれについて違法行為、つまり見切り販売を妨害されていた期間を認定。

② 損害の認定について

見切り販売の妨害行為がなければ回避できたであろう損害は、①ある時間以降に見切り販売を行った場合の利益から②ある時間以降も見切り販売を行わなかった場合の利益を控除した額という考え方(差額説)を基本的には是認

もっとも、損害の性質上、その額を立証することが極めて困難であるから、民訴法248 条に基づき、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定。ただし、ある程度謙抑的かつ控え目に認定

結局、原告らそれぞれについて、概ね、請求額の10%程度が認容されたにとどまる。

コメント

独禁法25条に基づく損害賠償請求においては、公正取引員会に対する求意見という制度があります。本件では、東京高裁は、公正取引委員会に対して損害の計算方法について意見を求めました。しかし、考えが浅いと言わんばかりに無視されました。

確かに、実際に値下げ販売をある段階で一気に行うことについては、実際にその販売が行われなかった以上、それがあったことを前提に計算すること自体自家撞着です。

もっとも、仮定的な事実を想定しない限り、損害の計算ができないので、ここまでは認めました。

しかし、種々の経済的変動要因を考慮しなければならない、そうである以上、控えめにと断って、ごくごく気持ちばかりの損害を認定したにとどまります。

かつて、同じような損害賠償請求が最高裁に係属しました。その際、島谷六郎判事は補足意見を述べています。「その算出方式については、立法過程における十分な検討によって、合理的な方式が見出されるべきものである。そのようにして、はじめて同条による訴訟が容易となり、独占禁止法の精神も実現されることになる…独占禁止法二五条の訴訟を選択することにより、その目的を達成することができる」(鶴岡灯油最高裁事件判決)と。

事例

平成25年8月30日 東京高裁セブンーイレブン値引き制限訴訟判決

平成21年(措)第8号 排除措置命令書

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