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独占禁止法

平成25年11月28日

17.中小企業から見た独禁法 ―消費税の増税と中小企業保護対策―

平成26年4月1日から消費税が8%に引き上げられます。本来、消費税は、商品を買ったり、役務の提供を受けた事業者または消費者が支払うものです。

ところが、中小企業者の場合、取引上の地位が必ずしも強くないことから、買い受け企業に対し、販売した商品の消費税転嫁による増額分を請求しようにも、その増額分の支払の拒否を受けることが予想されます。

そうなれば、例えば、中小企業者が第1次の卸売業者であったとして、仕入れには消費税増額分を支払い、次の卸売では消費税増額分の支払を求めることができず、板挟みに遭い、資金繰りに窮してしまう虞があります。

そこで、中小企業者を犠牲にすることなく、消費税の円滑な転嫁が進められるように、立法措置がとられました。

長引くデフレ経済の中で、価格交渉が熾烈さを増してきていることにどっぷり浸かっていると、ややもすれば、取引相手からの価格交渉の大義名分の下に、結局、中小企業者がワリを食ってしまいかねません。

消費税増税施行も4か月前まで迫っておりますので、特に、中小企業者の方におかれては、この節目にワリを食わないため、企業防衛のためのちょっとした知識をお伝えします。

消費税の円滑な転嫁のため、消費税転嫁対策特別措置法(以下、「本特別法」といいます。)は、(1)主として大企業による中小企業者に対する消費税の価格転嫁拒否行為を禁止しています。また、(2)消費税の表示方法について、中小企業が消費税の転嫁を促進する転嫁カルテル・表示カルテルを認めています。

 

(1)大企業の中小企業者に対する消費税転嫁拒否の禁止

本特別法は、これまでお話ししてきた下請法(「下請代金支払遅延等防止法」)の枠組みと同様、大企業VS中小企業の力関係を前提に、大企業の横暴な振る舞いを規制するような形になっています。

 

大規模小売事業者(売上高100億円以上、または店舗面積3,000㎡以上)の事業者(継続的に商品や役務を供給するもの)に対する消費税転嫁拒否の禁止

大規模小売事業者以外の法人の事業者(資本金の額または出資の総額が3億円以下の事業者、両者の間に継続的取引関係あり)に対する消費税転嫁拒否の禁止

 

消費税転嫁拒否行為としては:

 

① 減額(例えば、消費税分を支払わない、消費税分を上乗せする契約をしていたのに、支払う段階になって消費税分を減じる。)

②「買いたたき」(例えば、原材料費は変わらないのに、消費税増額分を含む税込価格よりも低い税込価格を売り手に対して指定する。)

③「商品購入の要請」、「役務利用の要請」、「利益提供の要請」(例えば、売り手が買い手の指定する商品を購入しなければ、消費税の上乗せに当たって不利な取扱いをすることを示唆する。消費税の上乗せに応じる代わりに、協賛金を要求する。)

④「本体価格(税抜価格)での交渉の拒否」(例えば、売り手が提出した「本体価格と消費税額を別々に記載した見積書等」を買い手が拒み、消費税額を加えた総額のみを記載した見積書等を再度提出させる。)

 

(2)転嫁カルテル・表示カルテルの容認

本来、競争関係にある事業者が共同して、価格を決めたり、生産量を決めたりすることなどは、公正な競争秩序に反するとして、独占禁止法により禁止されています。

しかし、上記1のように取引企業間に力の差があることから、あるがままの力関係に任せていては、必ずしも、消費税増税分が転嫁されていきません。

そこで、本特別法により、例外的に、力の弱い企業に連合軍を組織することを許し、円滑に消費税増税部分が転嫁されていく仕組みを作りました。

 

① 転嫁カルテル(消費税の転嫁の方法の決定についての共同行為)

例えば、

事業者がそれぞれ自主的に定めている本体価格に消費税額分を上乗

消費税額分を上乗せした結果、計算上生ずる端数を、切上げ、切捨て、四捨五入等により合理的な範囲(例えば、本体価格98円×8%=消費税額7.84円→8円)で処理

② 表示カルテル(消費税についての表示の方法の決定についての共同行為)

例えば、

消費税込価格と消費税額とを並べて表示

消費税込価格と消費税抜価格とを並べて表示

 

但し、これらのカルテルを実施するためには、中小企業者または事業者団体による事前の届け出が必要です。うち、転嫁カルテルについては、実施主体について、主として中小企業者または中小企業を主たる構成員とする事業者団体である必要があります。

 

担保手段

もちろん、上記の規制が実効性を持って施行されるように、公正取引委員会、中小企業庁、主務大臣による検査・指導等が行われます。悪質な事例については、「社名の公表」などの厳しい措置が取られます。関係官署に相談窓口も設けられています。もし、正確な担当部署を探すのが手間というのでしたら、消費税価格転嫁等総合相談センター(専用ダイヤル:0570-200-123、平日9:00~17:00)も設けられているようですので、悩んだら相談してみてはいかがかと思います。もちろん、当事務所でもご相談をお受けしております。

 

詳しくは、中小企業庁または公正取引委員会のウェブページをご覧下さい。

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