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独占禁止法

平成25年4月19日

11.中小企業から見た独禁法 ―有償支給原材料等代金の早期決済―

今回は、有償支給原材料等代金の早期決済です。早期決済は、平成23年度の勧告(18件)中に1件あります。指導(11の違法類型に係るもの2,286件)の中では、45件で、8位と下位です。下請事業者が親事業者から原材料等を支給された場合に、下請事業者が親事業者から、その原材料等を元に製造した製品の請負代金の支払時期より早くその代金を支払わされる場合、下請事業者は資金繰りが苦しくなります。

有償支給原材料等代金の早期決済

(1)条文

第4条 

2 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあつては、第1号を除く。)に掲げる行為をすることによつて、下請事業者の利益を不当に害してはならない。

一  自己に対する給付に必要な半製品、部品、附属品又は原材料(以下「原材料等」という。)を自己から購入させた場合に、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、当該原材料等を用いる給付に対する下請代金の支払期日より早い時期に、支払うべき下請代金の額から当該原材料等の対価の全部若しくは一部を控除し、又は当該原材料等の対価の全部若しくは一部を支払わせること

 

(2)意義・趣旨

親事業者が下請事業者に対し、有償で原材料等を支給し、物品の製造等を委託する場合があります。

このような場合、下請事業者の保護のため、親事業者は下請事業者から、その原材料等が使用された製品の下請代金の支払期日より早い時期に、支給した原材料等の対価の支払を受けることが禁止されました。

当月に納入する製品分の原材料代金をその請負代金から差し引くことは問題ありません。しかし、未だ納入されていない製品に対応する原材料代金についてまでその下請代金から相殺する場合は違反になります。

わかりやすく言えば、親会社が下請事業者に対し、有償で原材料を提供した場合、その原材料を元に売上が計上できるまでは、売掛金の請求は待ってあげなさい、ということです。

また、下請事業者が自発的に原材料代金を先払いするといってきたとしても違反になります。

(3)適用例

平成23年度の勧告件数は、18件中1件、平成23年度の指導件数(11禁止行為類型に限る。)は、2,286件中45件(2%)です。

例えば、以下のような例があります。

親事業者は、下請事業者に対し、タイルの製造を委託し、有償で原材料を支給していた。親事業者は、製造加工から納品までの期間を考慮せず、有償支給原料の代金の支払期日を定め、下請代金の支払期日より早い時期に、下請代金の額からその原材料の代金を支払わせていた。

 

親事業者は、下請事業者に対し、菓子の製造を委託し、包装材料を支給していた。親事業者は、その包装材料を使用して製造した菓子の請負代金の支払を行う前に、その包装材料の代金を、下請代金の額から控除し、または、支払わせていた。しかも、その控除または支払わせていた包装材料の対価には、菓子の製造中止等により不要となった分の対価の一部を負担させていた。

 

親事業者は、下請事業者に対し、自動車用部品等の製造を委託し、有償で原材料を支給していた。親事業者は、東日本大震災の影響により下請事業者の製造が停止し、その原材料を用いた物品が納品されていないにもかかわらず、その原材料の代金を下請事業者が既に納品済みの物品の下請代金の額から控除していた。

 

(4)わかりにくい条文へのアテハメの仕方

本項の書きぶりは、「下請事業者の利益を不当に害してはならない」と規定してあります。ですから、文言上、有償支給原材料等の代金の支払がこれを用いた製品の下請代金の支払期日より早い場合は全て違法というわけではありません。

とすれば、本号違反の認定は、独禁法に規定されている優越的地位の濫用の認定とあまり変わらないようにも見えます(2.中小企業から見た独禁法 ―下請法の活用法2―を参考)。

しかし、実際の公正取引委員会の運用は、本号に書いてある「下請事業者の責めに帰すべき理由」の有無に尽きるようです。私も、わざわざ下請事業者の資金繰りの保護のために、本号を立法したのであるから、下請事業者に帰責事由が認められない限り、有償支給原材料等代金の早期決済は違反とすべきと思います。

では、「下請事業者の責めに帰すべき理由」とは何でしょうか。

有償支給原材料等代金の支払を製品の完成まで延期してまで、下請事業者を保護する必要がない場合がこれに当たると解されます。

具体的には、下請事業者が支給された原材料等を過失により毀損するなどして、その原材料等を元に製品の製造ができなくなった場合、支給された原材料等とは別の原材料等を元に製品を製造してしまった場合、支給された原材料等で製品を製造しなかった場合などがあげられます。

このように考えれば、有償支給原材料等代金の早期決済は、一見論理操作が複雑そうな条文ですが、それほどアテハメに困難を伴わないと思われます。

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