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独占禁止法

平成25年3月22日

10.中小企業から見た独禁法 ―利益提供要請―

今回は、利益提供要請です。利益提供要請は、平成23年度の勧告(18件)の中に3件あります。しかし、指導(11の違法類型に係るもの2,286件)の中では、52件で、7位と下位です。下請事業者が親事業者から金銭や役務の提供を強制されれば、下請事業者はその分、利益が減殺されてしまいます。

利益提供要請

(1)条文

第4条 

2 親事業者は,下請事業者に対し製造委託等をした場合は,次の各号(役務提供委託をした場合にあつては,第1号を除く。)に掲げる行為をすることによつて,下請事業者の利益を不当に害してはならない。

三 自己のために金銭,役務その他の経済上の利益を提供させること。

 

(2)意義・趣旨

親事業者が協賛金、協力金、対策費などその名目の如何を問わず、下請代金の支払い時に一定額を下請代金の額から差し引く場合は、下請代金の減額として規制の対象とされてきました。

しかし、これらが下請代金の減額という方法ではなく、下請事業者に別途支払わせたような場合には、規制の対象にならないという不合理が生じていました。

そこで、このような下請代金の減額の脱法行為というべき行為についても、直接禁止されるようになりました。

 

(3)適用例

平成23年度の勧告件数は、18件中3件、平成23年度の指導件数(11禁止行為類型に限る。)は、2,286件中52件(2%)です。

例えば、以下のような例があります。

親事業者は、下請事業者に対し、自動車部品の製造を委託し、自社の金型を貸与していた。親事業者は、注文の完了後当該部品の発注を長期間行わないにもかかわらず、下請事業者に対し、無償でこの金型を保管させていた。

親事業者は、下請事業者に対し、食料品等の製造を委託していた。親事業者は、下請事業者に対し、「割り戻し金」として1年間に支払う下請代金の額の合計額に一定率を乗じて得た額を提供させていた。

親事業者は、下請事業者に対し、衣料品等の製造を委託していた。親事業者は、下請事業者に対し、商品を受領した後、販売期間の終了した在庫商品を「一時返品特約」に基づき引き取らせていた(返品の禁止規定違反)が、その返品を行うに当たり、送料として金銭を提供させていた。

親事業者は、下請事業者に対し、靴等の製造を委託していた。親事業者は、下請事業者に対し、提供させる金銭とそれによって得られる下請事業者の利益との関係を事前に明らかにすることなく、「広告協賛金」として一定額を提供させていた。

 

特に、①親事業者が想定した利益の達成が難しくなったような場合、その補填を図るため、下請事業者に対し、協賛金や決算対策費等の名目で費用負担を求めたり、②従業員の派遣を要請したり、③対価を支払わず委託した内容とは別の物を提出させるようなことがよく観察されます。

 

(4)わかりにくい条文へのアテハメの仕方

本号の書きぶりは、「下請事業者の利益を不当に害してはならない」と規定してあります。ですから、原則、金銭の提供や役務の提供=違法というわけではありません

親事業者の要請に応じて提供した経済上の利益でも下請事業者の利益になり、下請事業者の自由な意思によって提供する場合には、当然取引として合理的だからです。

となると、「不当」と言えるかどうかの個別の判断が必要になってきます。

では、どのような場合に「不当」と言えるのでしょうか

「不当」というためには、当該費用の負担または役務の提供が、下請事業者の自由な意思によっていないことです

その判断資料として、例えば、①費用負担の計算上の根拠が明らかにされているか、②費用負担の対象がそのものとして下請事業者の利益になっているか、③費用負担が下請事業者との取引の条件になっていないか、④費用負担しないことに対して不利益を与えるとしていないかなどが挙げられます

下請事業者の多くは、販売促進について親事業者に依存していることが多いようです。ですから、下請事業者は、取引の継続自体に負い目があることが否めません。何かおかしいと思ったら、というよりも、最初から引いていてはおかしいと気付くことさえ難しいかも知れません。経済的に見て取引のように見える行為が実は不合理ではないか、単にルーティン業務に流されるだけでなく、ちょっと立ち止まって、価値中立的に下請法の関連すると思われる条文にアテハメしてみること、心当たりの事業者の方はちょっとした自己診断を行ってみてはいかがでしょうか。

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