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独占禁止法

平成25年2月27日

9.中小企業から見た独禁法 ―やり直し等―

今回は、やり直し等です。やり直し等は、平成23年度の勧告(18件)の中には挙げられていません。しかし、指導(11の違法類型に係るもの2,286件)の中では、68件あり、6位です。下請事業者が親事業者から製作のやり直しを強制されれば、下請事業者は経費がかさむことになり、利益が減殺されます。

やり直し等

(1)条文

第4条 

2 親事業者は,下請事業者に対し製造委託等をした場合は,次の各号(役務提供委託をした場合にあつては,第1号を除く。)に掲げる行為をすることによつて,下請事業者の利益を不当に害してはならない。

四 下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに,下請事業者の給付の内容を変更させ,又は下請事業者の給付を受領した後に(役務提供委託の場合は,下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした後に)給付をやり直させること。

 

(2)意義・趣旨

親事業者が一方的な都合で契約内容を変更しまたは下請事業者にやり直しをさせたのに、これに要した費用分を負担しない場合は、下請代金の減額や受領拒否といった禁止行為として規制の対象とされてきました。

しかし、やり直し等がこれら違反行為に該当するかを判断するには評価を伴い、規制から漏れるケースも少なくなかったようです。

そこで、このような事態の防止のため本項が規定されました。

ですから、下請事業者がやり直しについて同意していてもこれが不当なら違法です。

 

(3)適用例

平成23年度の勧告件数は、18件中0件(0%)、平成23年度の指導件数(11禁止行為類型に限る。)は、2,286件中68件(3%)です。

例えば、以下のような例があります。

親事業者は、下請事業者に対し、木箱の製造を委託していた。親事業者は、下請事業者の責めに帰すべき理由がなく発注内容を変更したにもかかわらず、下請事業者に対し、この変更により生じた費用の全額を負担させていた。

親事業者は、下請事業者に対し、システムプログラム開発等を委託していた。親事業者は、下請事業者の責めに帰すべき理由がなく発注内容を変更したにもかかわらず、下請事業者に対し、この変更により生じた費用の全額を負担させていた。

この問題も、買いたたき、購入等強制の問題と同様、いずれも下請事業者の真意に反した押し付けです。しかし、親企業は、これを正当化する理由(口実)を付けてきます。その口実に乗せられないためにも、これまでどのような口実を用いたかを知っておくことも重要です。

・市場での需要が見込みほどなかった。

・元の注文が取り消された。

・製品が完成したとして受け取ったものの、後で元の発注者からクレームをつけられた。

 

(4)わかりにくい条文へのアテハメの仕方

本号の書きぶりは、「下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに」と規定してあります。ですから、原則、やり直しさせれば、違法となります

但し、「下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに」と規定してありますので、例えば、提供した製品に欠陥がある場合または後に隠れていた欠陥が発見された場合などには、違法となりません。もっとも、親事業者が単にそのように言い張っている(言い掛かりをつけている)だけでは不十分で、客観的に欠陥が認められる必要があることは当然です。

では、その欠陥の判断基準はどうなるのでしょうか

親事業者と下請事業者との間でなされる請負契約の内容により判断されます。親事業者は、下請事業者に対し、実際の作業に着手する前に、親事業者の濫用的行為を防止するため、所定の事項を記載した文書(3条書面)を交付する義務があります(下請法3条)。

ですから、他に請負契約書がない場合、少なくともこの3条書面により判断されることになります。

ところが、現実には、その認定が難しい場合が少なくありません。例えば、注文家具の製作が請負の目的となったとして、設計図、仕様書が作成され、3条書面と一体になっていたとしても、現実に、出来上がった製品が契約の目的にかなうものか否かは、契約書に書いてあることだけではよくわからない場合も少なくなく、製作物の用途、当事者の打ち合わせの経緯、業界の標準、商慣行など、契約の内容を明らかにするために、様々なファクターを斟酌することになります。

もっとも、言い掛かりをつけられそうなところは、それぞれの業界の経験に基づき、予想がつくものもあるでしょうから、その点をできるだけ明確に規定しておくことが、親事業者に付け込まれないための最初の防衛線と思われます。

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