トップページ  >  連載  >  独占禁止法8

独占禁止法

平成25年1月11日

8.中小企業から見た独禁法 ―購入等強制―

今回は、購入等強制です。購入等強制は、平成23年度の勧告(18件)の中には挙げられていません。しかし、指導(11の違法類型に係るもの2,286件)の中では、86件あり、5位です。下請事業者が親事業者から物の購入を強制されれば、下請事業者は利益が減殺されます。

購入等強制

(1)条文

第4条 

親事業者は,下請事業者に対し製造委託等をした場合は,次の各号(役務提供委託をした場合にあつては,第1号及び第4号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。

六 下請事業者の給付の内容を均質にし又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除き,自己の指定する物を強制して購入させ,又は役務を強制して利用させること。

 

(2)意義・趣旨

請負代金を支払ってもらっていても、下請事業者が、別途不必要な物やサービスを、親事業者から購入しなければならないならば、下請事業者は、理不尽に、それだけ利益を吐き出さなければなりません。

そこで、このような事態の防止のため本項が規定されました。

ですから、下請事業者が当該物の購入またはサービスの利用を合意していてもこれが不当なら違法です。

 

(3)適用例

平成23年度の勧告件数は、18件中0件(0%)、平成23年度の指導件数(11禁止行為類型に限る。)は、2,268件中86件(3.8%)です。

この問題も、買いたたきの問題と同様、いずれも下請事業者の真意に反した押し付けです。しかし、親企業は、これを正当化する理由(口実)を付けてきます。その口実に乗せられないためにも、これまでどのような違法行為があったか知っておくことは有意です。

取引の対象から、以下の二つに分かれます。

① 直接仕事交換条件型

親事業者は、下請事業者に対し、自動車の修理を委託していた。

親事業者は、下請事業者に対し、自社の販売する自動車の購入を要請していた。

② 間接仕事交換条件型

親事業者は、下請事業者に対し、自動車の修理を委託していた。

親事業者は、下請事業者に対し、親事業者の子会社が販売する自動車の購入を要請していた。

その際の口実は、色々あります。

① 自社製品のセールスキャンペーン取り込み型

自社の製品のセールスキャンペーンに当たり、下請事業者ごとの目標額を定めて、購入要請。

② つきまとい型

自社工場入口に「当社製車両以外構内乗入れは御遠慮下さい」と表示した看板を立て、

他社製の車両で乗り入れる都度、「他社製車両乗入れ願」の提出を要請、

納品書に「納入は当社の車でお願いします」と表示して、購入要請。

③ 季節型

毎年年末になるとノルマを定めて自社の親会社の商品の購入を要請。

 

(4)わかりにくい条文へのアテハメの仕方

本号の書きぶりは、「正当な理由がある場合を除き」と規定してあります。ですから、原則、特定の方品の購入やサービスの利用を強制すれば、違法となります

ここで、「強制」がポイントとなります。

強制する方法には、上は目の前にちらつかせた凶器で脅すレベルから上のように社屋にポスターを貼るなどして、真綿で首を締めつけていくような段階まで様々です。普通の継続的取引関係ですから、凶器で脅すというようなことは本来の射程ではなく、下請事業者の真意に反したかが問題です。

しかし、買いたたきの認定手順でお話ししましたように、真意は直接証明できないため、真意を判断するため、取引の経過から推認します。

親事業者が、下請取引関係を梃子に、事実上、下請事業者に対して物の購入またはサービスの利用を余議なくさせているか

典型的には、物の購入またはサービスの利用を下請事業者との取引の条件にしていること、

物の購入またはサービスの利用をしないことに対して不利益を与えるとしていることが認められることです。

ただし、「正当な理由がある場合」、例えば、製品の品質を一定に保つために原料を指定の業者から購入させる場合などには、違法性はなくなります。もっとも、親事業者が単にそのように言い張っているだけでは不十分で、客観的に必要性が認められる必要があることは当然です。

 

いつもの繰り返しになりますが、親事業者は購入等強制を実行するに当たり、もっともらしい理由をつけてくるのが通常です。親事業者の担当者(例えば、営業)自身、習慣の中で無意識に行動し、「強制」していること自体の認識がないこともあります。どこかの段階で、何かおかしいと思ったら、まずは、価値中立的に下請法の関連すると思われる条文にアテハメてみてください。

top