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独占禁止法

平成24年11月30日

7.中小企業から見た独禁法 ―買いたたき―

今回は、買いたたきです。買いたたきは、平成23年度の勧告(18件)の中には挙げられていません。しかし、指導(11の違法類型に係るもの2,286件)の中では、166件あり、4位です。下請事業者が親事業者から不当に低い下請代金を押し付けられれば、下請事業者は利益を確保することができません。

買いたたき

(1)条文

第4条 

2 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあっては、第1号を除く。)に掲げる行為をすることによって、下請事業者の利益を不当に害してはならない。

五 下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること。

 

(2)意義・趣旨

代金は支払えばいいというものではありません。

もし、下請事業者が、不当に低い下請代金を甘受しなければならないならば、資金繰りがつかなくなり、従業員への賃金の支払い、原材料代金の支払い等ができなくなる恐れがあります。

そこで、このような事態の防止のため本項が規定されました。

ですから、下請事業者が当該金額で請負代金額を合意していてもこれが不当なら違法です。

 

(3)適用例

平成23年度の勧告件数は、18件中0件(0%)、平成23年度の指導件数(11禁止行為類型に限る。)は、2,268件中166件(7.3%)です。

いずれも下請事業者の真意に反した押し付けです。しかし、親企業は、これを正当化する理由(口実)を付けてきます。その口実に乗せられないためにも、これまでどのような違法行為があったか知っておくことは有意です。

① 一律型

自社の経費削減を図るため、下請事業者に対して、「出精値引」と称して、下請代金の額に一定率(10.5パーセントから 17.5パーセントの間の率)を乗じて得た額を負担するよう要請し、下請代金の額に一定率を乗じて得た額を当該下請事業者に支払うべき下請代金の額から差し引いた。

② 策略型

親事業者は、下請代金の額を定めずに部品を発注し、納品された後に下請事業者と協議することなく、通常の対価相当と認められる下請事業者の見積価格を大幅に下回る単価で下請代金の額を定めていた。

親事業者は、単価の決定に当たって、下請事業者に1個、5個及び10個製作する場合の見積書を提出させた上、10個製作する場合の単価(この単価は1個製作する場合の通常の対価を大幅に下回る。)で1個発注した。

③ コストアップ転嫁型

親事業者は、下請事業者との間で単価等の取引条件については年間取決めを行っているが、緊急に短い納期で発注する場合は別途単価を決めることとしていた。親事業者は、週末に発注し週明け納入を指示した。下請事業者は、年間取決め単価に深夜・休日勤務相当額を上乗せした下請単価で見積書を提出した。しかし、下請事業者の見積価格を大幅に下回る年間取決め単価で下請代金の額を定めた。

親事業者は、従来、週一回であった配送を毎日に変更するよう下請事業者に申し入れた。下請事業者は、従来の配送頻度の場合の下請単価より高い単価で見積書を提出した。しかし、親事業者は、下請事業者の見積価格を大幅に下回る単価で下請代金の額を定めた。

④ 同情型

親事業者は、下請事業者に対し、収益が回復するまでの間の一時的なものである旨の限定を付した上で、下請代金の引き下げによる協力を要請し、下請事業者は、親事業者の収益が回復した場合には下請代金の額を当初の水準まで引き上げることを条件に、下請代金を大幅に引き下げることを受け入れた。その後、親事業者の収益が回復し、代金の引き上げの申出がなされたにもかかわらず、親事業者は、下請代金を据え置いた。

 

(4)わかりにくい条文へのアテハメの仕方

そもそも、下請法は、独禁法の抽象性を克服し、優越的地位の濫用行為を迅速かつ効果的に規制するため、解釈適用が簡明になるように規定されています。

しかし、買いたたきについては、外形から形式的に違法と判断するのは、適切でなく、諸般の事情を考慮した上で、これを判断する構造になっています。それ故、本条文は、抽象的でアテハメが難しくなっています。

そこで、実際に目の前にあるケースについて、どの事実を拾い、要件に当てはめていけばよろしいか、簡便な手順を示したいと思います。

① 通常支払われる対価に比して著しく低い下請代金

貴社の取引地域において一般に支払われる貴社の給付と同種または類似の給付の対価と比較します。

もし、これがわかりにくく、かつ、問題の給付について従前の給付と同種または類似のものであればこれを基準にします。

なお、何パーセントを下回ったら著しく低い下請代金であるというような基準は、ガイドライン等においても示されていませんので、ケースバイケースで判断せざるをえません。

② ①を不当に定めていること

一言でいえば、下請事業者の真意に反しているかです。

しかし、真意は直接証明できないため、真意を判断するため、取引の経過から推認します。

つまり、以下のようなファクターから総合的に判断します。

請負代金価額が通常の対価とのかい離の程度

下請事業者は営利目的で事業を行っているのであり、通常の対価とのかい離の程度が大きいほど、真意に反することが推認されます。

両当事者間で十分な協議が行われたか

具体的請負代金価額を前提に、両当事者が、いつ、どのような資料を提出し、それをもとにどのようなやりとりがあったか。例えば、通常の対価とのかい離の程度が大きく、下請企業の意見を聞いていないほど協議の認定は消極になります。

 

親事業者は買いたたきを実行するに当たり、もっともらしい理由をつけてくるのが通常です。取引開始時は異議を留めていたけれども、「もう、実際に納品してしまった」、さらに「代金も受け取ってしまった」、「もうその代金で契約が有効に成立しているから何も言えないんだ」、と諦めることはありません。まさに、このように取引関係上相対的に弱い地位にある下請事業者にてこ入れするのが下請法だからです。何かおかしいと思ったら、まずは、価値中立的に下請法の関連すると思われる条文にアテハメてみてください。

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