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独占禁止法

平成24年11月22日

6.中小企業から見た独禁法 ―割引困難な手形―

今回は、割引困難な手形です。割引困難な手形の交付は、平成23年度の勧告(18件)の中には挙げられていません。しかし、指導(11の違法類型に係るもの2,286件)の中では、280件あり、第1位の支払遅延からかなり差がありますが、2位です。割引が困難な手形を交付することは、期限が来るまで割引できず、受領後直ぐに現金化できないということになりかねません。結局、支払遅延と同様の効果を生むものであり、少し技巧的な下請いじめということになります。

割引困難な手形

(1)条文

第4条 

2 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあっては、第1号を除く。)に掲げる行為をすることによって、下請事業者の利益を不当に害してはならない。

二 下請代金の支払につき、当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関(預金又は貯金の受入れ及び資金の融通を業とする者をいう。)による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。

 

(2)意義・趣旨

代金は支払えばいいというものではありません。

もし、下請事業者が、一般の金融機関で割引が困難な手形を交付されたならば、下請事業者は支払期日に下請代金を受け取ることができません。

そこで、このような事態の防止のため本項が規定されました。

ですから、下請事業者が親企業から自発的に手形を受け取っていても割引が困難なら違法です。

 

(3)適用例

平成23年度の勧告件数は、18件中0件(0%)、平成23年度の指導件数(11禁止行為類型に限る。)は、2,268件中280件(12%)です。

繊維製品の製造を下請事業者に委託していた会社が、サイト(手形期間)が150日(90日を超えること)の手形を交付していた

電気製品の部品の加工を下請事業者に委託していた会社が、サイト(手形期間)が130日(120日を超えること)の手形を交付していた

 

(4)わかりにくい条文について一言

抽象的でよくわかりにくいのが、「割引困難な手形」の意味です。

現に割引を試みて断られることまで必要か。

現に断られることまでは不要です。

では、どのような基準で割引困難性が判断されるのか。それは不渡が見込まれる手形のことか、同じ手形でも、どのような事業者が割引に行くかでも異なるのではないか。既に、事業者が取引銀行の限度額いっぱいまで割引している場合はどうか、誰が判断するのか等々、疑問が出ます。

残念ながら、裁判でその解釈が争われた記録は見当たらず、現在の行政解釈として確立しているのは手形サイトの基準のみとなっています。以下は、公正取引委員会のQ&Aの抜粋です。

「公正取引委員会及び中小企業庁は、昭和41年以降、支払手形の手形期間を繊維製品に係る下請取引においては90日以内、その他の下請取引については120日以内にするように指導してきました。現在では、上記手形期間以内の手形を交付することが商慣習になっており、公正取引委員会及び中小企業庁は、上記手形期間を超えるいわゆる長期手形は、下請法第4条第2項第2号の規定(割引困難な手形の交付の禁止)に違反するおそれがあるものとして取り扱い、全て上記期間内に改善するよう指導しています。」

商慣行に応じて柔軟に適用できるように立法したためか、却って、適用の射程が分かりにくくなっています。

なお、「一般の金融機関」とは、銀行、信用金庫、信用組合、商工組合中央金庫等の預貯金の受入と与信を併せて行う金融機関をいいます。与信のみを行う貸金業者は、含まれません。したがって、貸金業者で受け取った手形を割り引いてもらえたとしても、「一般の金融機関」で割り引いてもらえたことにはなりません。

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