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独占禁止法

平成24年8月31日

5.中小企業から見た独禁法 ―下請代金の支払遅延―

今回は、下請代金の支払遅延です。下請代金支払の遅延は、平成23年度の勧告(18件)の中には挙げられていません。しかし、指導(11の違法類型に係るもの2,286件)の中では、1,328件あり、ダントツの1位です。約束した代金を支払わないというのは、親事業者からみて、単に何もしなければいいだけであり、もっとも容易な下請いじめということになります。

下請代金支払の遅延

(1)条文

第4条 

親事業者は,下請事業者に対し製造委託等をした場合は,次の各号(役務提供委託をした場合にあつては,第1号及び第4号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。

二 下請代金をその支払期日の経過後なお支払わないこと。

(2)意義・趣旨

代金は支払えばいいというものではありません。

もし、下請事業者が、約束通り代金を支払ってもらえなければ、資金繰りができなくなります。

そこで、このような事態の防止のため本項が規定されました。

もっとも、当事者が合意すれば、支払期日はいつでもいいというわけではありません。支払期限を定めても、それがはるか遠い将来では結局支払遅延を規定した本条の意味がなくなってしまうからです。

そこで、下請代金の支払期日は、親事業者が下請事業者の給付を受領した日(サービスの場合は、サービスの提供をした日)から起算して60日以内の期間内で、かつ、できる限り短い期間内にしなければならないとしました(2条の2第1項)。

しかも、支払期日がそもそも定められていなかったり、これより長い期間が定められた場合に対する対策もとられています。支払期日が定められていなかった場合は、親事業者が下請事業者の給付を受領した日をもって代金支払日とみなし、他方、60日より長い期間が定められた場合は、給付を受領した日から起算した60日を経過した日の前日を代金支払日とみなすことにしたのです(2条の2第2項))。

(3)適用例

平成23年度の勧告件数は、18件中0件(0%)、平成23年度の指導件数(11禁止行為類型に限る。)は、2,286件中1,328件(58%)です。

親事業者は、「毎月末日納品締切、翌々月末日支払」の支払にすることで、給付を受領してから60日を超えて、下請代金を支払っていた。

使用高払方式(コック方式)による取引で、給付を受領してから、60日を超えて、下請代金を支払う部分があった。コック方式とは、親事業者が下請事業者に対し、一定の在庫水準を確保させるよう納入させたうえで、親事業者は毎月使用した分だけ後に支払う方式。

親事業者は、下請事業者に対して、検収後支払としていた。ところが、納品された商品について検査に3カ月を要した。このため、給付を受領してから60日を超えて、下請代金を支払っていた。

(4)条文について一言

ややもすれば、「受領」(2条の2第1項)、すなわち支払期限の起算点について、親会社が納品した商品を実際に使った日、親事業者が納品について締め切った日、親事業者の納品した商品の検査が終わった日などについて、親事業者がその時点で受領と判断したのだからとして、下請事業者の方はうっかりこれらを起算点にしてしまいかねません。

「受領」の解釈の仕方次第で、60日計算のメーターを下すのがいくらでも後になってしまいます。

そこで、親事業者の恣意的な解釈を阻止すべく、「受領」の意味をきちんと理解することが大切です。

受領」とは、親事業者が(検査をするかどうかを問わず)下請事業者の給付した目的物を受け取り、自己の占有下に置くことを言います。この点について、解釈上の疑義を排除するため、「親事業者が下請事業者の給付の内容について検査するかどうかを問わ」ないとしているのです。簡潔にいえば、親事業者が受け取った日として覚えてください。

なお、下請代金支払遅延の禁止については、他の禁止規定と異なり、「正当な理由がある場合を除き」、「下請事業者の責に帰すべき理由がないのに」、「不当に」などの禁止行為が正当化される場合が想定されておらず、形式的に期限を過ぎれば一律違法とも読めます。しかしながら、本法も私法上の一般原則を前提にしているものと解され、納品後しかるべき期間内に欠陥が発見された場合には、本号は適用されないものと解されます。結局、親事業者から欠陥の存在を主張された場合には、別途解決しなければならないことになります。

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