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独占禁止法

平成24年8月30日

4.中小企業から見た独禁法 ―下請代金の減額―

条文を知ることの意味

前回、中小企業の方は、今の取引の有り様を、所与のものとして見るのではなく、一度距離を置いて、これは一体公正な取引なのかどうか、検査しみてください、と申し上げました。

まず、条文の意味の問題です。下請法が禁止する行為は、11類型あります。禁止行為の規定してある4条を一読しただけで、凡そ理解できそうな規定もあれば、理解しにくい規定もあります。

ついで、当事者企業の意識の問題です。すなわち、親事業者が従前の経過、業界の慣行など背景事情を味方にもっともらしい理由をつけてくることから親事業者の従業員もさほど問題意識を持たないこと、下請事業者は仕事をもらってやりくりさせてもらっているという負い目があり、親事業者、下請事業者ともに目が曇りがちです。

この2つの問題に対処する方法は、ごく簡単です。条文の規定の趣旨と意義を知り、その条文が射程とする具体的事例、言いかえれば、どのような現象がこの条文にアテハマルかを知ること、ただこれだけです。

そこで、今回から、しばらくの間、11の禁止行為類型について、それぞれ、規定の趣旨・意義、適用例を見ていきたいと思います。

順序は、条文の並んでいる順ではなく、現実に適用される頻度の高い事項の順、すなわち重要なものから検討していきたいと思います。

下請代金の減額

(1)条文

第4条 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあつては、第1号及び第4号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。

三 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること。

(2)意義・趣旨

下請事業者は、代金を支払ってもらえなければ、資金繰りがつかなくなり、従業員への賃金の支払い、原材料代金の支払い等ができなくなる恐れがあります。

  

そこで、このような事態の防止のため本項が規定されました。

ですから、下請事業者が親事業者の減額の申し込みに対し、減額を承諾していたとしても違法です。

(3)適用例

① 言い掛かり型

下請事業者が断りにくいことを知悉して、無理な条件で契約を成立させてしまう類型です。下請事業者が納期に間に合わなかった場合、「この条件で受けたのに納期に間に合わなかったでしょう、無理ならいくらでも他の業者さんに頼めたのだから…」と言われてしまえば、下請事業者には返す言葉がありません。このような言い掛かりとも言うべき違法行為には以下のような例がありあす。

・親事業者からの作成に必要な材料等の支給の遅れまたは無理な納期指定によって生じた納期遅れ等を下請事業者の責任によるものとして下請代金の額を減ずること

・親事業者の客先からのキャンセル、市場変化等により不要品となったことを理由に下請代金の額から差し引くこと

② 寸借型

業界、業態、地域によっては、当然のことのように、振込手数料を減額してくる事業者があります。下請事業者としては、他の同業者も同じ扱いを受けているし、ずっと前からそうだし、わずかばかりの金額を請求したところで、関係は悪化するだけだろうしと思ってしまいがちです。このようなちょっとおかしくだされ(寸借)とも言うべき違法行為には以下のような例がありあす。

・消費税・地方消費税額相当分を支払わないこと

・下請代金の支払いに際し、端数が生じた場合、端数を1円以上の単位で切り捨てて支払うこと

・下請事業者と合意することなく、下請代金を銀行口座へ振り込む際の手数料を下請事業者に負担させ下請代金の額から差し引くこと

③ 便乗型

下請事業者が親事業者に対し、資金繰りなどの理由により支払を早めてもらうことがあるかもしれません。そのような場合に、仮に、親事業者がその金額を金融機関から借り、支払った場合に親事業者が負担すべきであった金利以上に支払額を減額することなどです。下請事業者にも弱みがあり、なかなか反論できないものです。このような下請事業者の弱みに対する便乗とも言うべき違法行為には以下のような例があります。

・手形払を下請事業者の希望により一時的に現金払いにした場合に、下請代金の額から自社の短期調達金利要相当額を超える額を減額すること

・下請事業者との間に単価の引き下げについて合意が成立し単価改定された場合、その前にすでに発注されているものにまで新単価を遡及適用して下請代金を減額すること

④ 同情型

下請事業者にとって、親事業者は、広い意味では、共同事業者です。下請という文字通り、親事業者の事業の一端をなしているといえます。そうであるから、親事業者から、下請事業者の部品も入った機械の販売について、宣伝をするので、協力して欲しいと言われたら、下請事業者は、断りにくいものです。このような同情をもとめるような違法行為には以下のような例がありあす。

・販売拡大のために協力して欲しいなどの名目をつけて、下請代金の何%からを代金から差し引くこと

以上の例は、ほんの一部であり、歴史的に見ても、現状で見ても、枚挙に暇がないのです。

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