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独占禁止法

平成24年8月21日

1.中小企業から見た独禁法 ―下請法の活用法1―

新聞などでしばしば目にする法律に、独禁法、または、独占禁止法という法律があります。その正式名称は、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」です。

独禁法を所管する公正取引委員会のホームページでは、独禁法を以下のように説明しています。「独禁止法の目的は、公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすることです。市場メカニズムが正しく機能していれば、事業者は、自らの創意工夫によって、より安くて優れた商品を提供して売上高を伸ばそうとしますし、消費者は、ニーズに合った商品を選択することができ、事業者間の競争によって、消費者の利益が確保されることになります。このような考え方に基づいて競争を維持・促進する政策は「競争政策」と呼ばれています。」

では、ここでいう「事業者」とは、誰を指すのでしょうか。その響きからは、上場会社から一人会社までを含む会社、個人で商売をしている人、すなわち大企業から零細企業までを等しく対象としていると思われるでしょう。それはその通りです。

しかし、実際に、独禁法違反が問題となった事案を一目見れば、大企業が小さな企業又は消費者の犠牲の下に、大企業が利益を得ているケースがほとんどであることが分かると思います。往々にして、自己に有利な取引条件(価格、数量、販売相手等)を設定できるような市場での基盤(市場支配力)があるからこそ、「公正かつ自由な競争」に反して利益を確保することができるわけです。

という次第で、独禁法の実際の運用上の名宛人(特に、公正取引員会が行う排除措置命令)は、大企業と言ってもよいでしょう。

また、大企業の横暴により中小企業の経済活動が制約されることが多いことから、独占禁止法の補完法として、下請事業者に対する親事業者の不当な取扱いを規制する「下請法」(正式名称は、「下請代金支払遅延等防止法」)も用意されています。

これからは、中小企業のために、独禁法及び下請法(以下、併せて「独禁法等」といいます。)を活用するか、言い換えれば、中小企業対大企業(便宜上、大企業とはいじめられる中小企業に対して相対的に大きい企業とします。)という観点から、具体例を引用し、できるだけわかりやすく説明したいと思います。

例えば、以下のような独禁法等違反があります。

大企業が下請け企業に対し、

類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い下請代金を押しつける(買いたたき)。

注文しておきながら、その物品等の受け取りを拒む(受領拒否)。

受け取った物品を返品する(返品)。

約束した下請代金を納品した後に減額する(代金減額)。

指定した物・サービスを無理やり購入・利用させる(購入・利用強制)。

金銭、労務の提供を求める(不当な経済上の利益の提供要請)。

これらは、独禁法により禁止される不公正な取引方法の一である優越的地位の濫用の場合によくみられる現象です。平成21年、優越的地位の濫用に対しても、排除措置命令制度だけでなく、課徴金制度が導入されていたところ、平成23年6月、株式会社山陽マルナカに対して、初の課徴金(2億2216万円)が課せられ、日本トイザらス株式会社(3億6908万円)、株式会社エディオン(約40億円)と続いています。

しかし、現実にこれらの行政処分がなされるまでには違法行為の発生から何年かが経過しています。また、課徴金の行先は国庫です。原状回復とはいえ、当然に大企業が過去に得た不当な利益が中小企業に返還されるという効果は伴いません。さらに、違反企業の市場占有率が高い場合、経済活動が制約されている企業が相当範囲に及んでいるなど、違反行為の市場への影響について相当の広がりがない限り発動されにくいという傾向があります。

もっとも、発注者と下請企業との資本の相対関係が一定の要件を満たす場合には、優越的地位の濫用の要件を充たさなくても、下請法が適用され、中小企業の保護が容易になるように工夫されています。

上記のような優越的地位の濫用のカテゴリー以外にも、様々な独禁法違反行為があります。

(業界団体が)会員企業に対し、一定の範囲の地域内の店舗の開設、増設を制限する。

(金融機関と利害関係のある一定の事業者が)金融機関が融資を行うに際し、自己と取引することを条件にさせる。

(市場占有率の大きな事業者が)自社の製品と競合する他社製品を購入しないこと(全量購入義務、排他的購入義務)を取引の条件にする。

(業界団体が)業界団体の会員以外の者に対して、パテントプールの特許権の実施許諾を拒絶する。

(市場占有率の大きな事業者が)自社と競合する商材の顧客に対し、差別的に廉売を行う。

(市場占有率の大きな事業者が)割戻金(リベート)等を提供し、自社製品のみを製品の材料として使用させるようにする。

(市場占有率の大きな事業者が)競業他社から商品の購入を始めた取引先に対し、価格を上げたり、販売を拒絶する。

(市場占有率の大きな事業者が)取引先の商品の販売先、販売価格、販売地域、販売活動を制限する。

これらも、不公正な取引方法(場合によっては、私的独占)に当たり、排除措置命令(行為によっては課徴金も伴う。)の対象になります。しかし、やはり、その発動については、優越的地位の濫用のところで述べたことが当てはまり、即効性がなく中小企業が過去に被った損害の回復までは及ばないことに限界があります。

そこで、独禁法上の規定を利用して、中小企業が大企業に対して、民事上の請求(民事訴訟)を行うことが挙げられます。行政処分の発動も、民事訴訟も、いずれも国家機関(行政庁か、裁判所か)の力を援用することには変わりません。しかし、民事訴訟による場合には、違反行為の市場への影響の広がりが相対的に狭くても発動され、また、中小企業が現実に被った損害の回復ができるというメリットがあります。

次回から、しばらくの間独禁法の特別法である下請法の活用法をお話しします。

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